親友に彼氏ができた④
そして、約束の放課後。
終礼が終わると、あたしは歩美に三階にある生物室に連れて来られた。
「…何で生物室?」
あたしが首を傾げてそう聞くと、歩美がドアノブに手を掛けながら言う。
「水野くん、生物部だから」
「…あぁ、」
って、地味!
よりによって文化部かよ、水野くん。
そう思いながら歩美の後ろにいたら、歩美がそのドアを開けるなり嬉しそうに水野くんを呼んだ。
「水野くん!」
歩美がそう呼ぶと、中から水野くんらしき声が聞こえて来た。
水野くんって、名前と顔は一致しているけど、あたしはその人とは一度も話したことがない。
なんせ一緒になったのは高校からだし、だけど一年の時もクラスが別だったからどんな人なのかも知らない状態。
あたしがそう思いながら生物室に顔だけを覗かせようとしたら、その直前に歩美が言った。
「真希。今日生物部部活ないから、ここで紹介出来るって」
歩美はそう言うと、可愛らしくニッコリ笑って右手でピースサインを作る。
あたしはその言葉に頷いて中に入ると、さっそく水野くんに目を遣った。
「!」
すると…目を遣った直後、水野くんとバッチリ目が合った。
水野くんは生物部が飼っているらしい亀にエサをやっている最中で、あたしと目が合うなり軽く頭を下げて言う。
「…ども、」
「ど、どーも…」
「……」
「……」
でもそれ以上は全く何も口にせず、水野くんはまた亀に視線を戻した。
な、なな何アレ!気まずい!
もしかして怒ってる!?なんか態度悪くない!?
あたしがそんな水野くんにそう思っていると、歩美が水野くんをフォローするように言った。
「あ、真希!この人が、あたしの新しい彼氏の水野くん。
でも水野くんね、なんだか緊張してるみたい!ほら、真希とは全然話したことなかったからさ~」
「そ、そうなんだ…」
「ね?水野くん、そうだよね?」
そして歩美が同意を求めるけれど、水野くんはそんなフォローを潰すように言う。
「別に」
「……」
「……」
呟くようにそう言って、今度は隣にいるハムスターにエサをやり始めた。
……は?何あれ何アレ!!
最っ悪じゃない!?
あんなのが彼氏で本当に良いわけ!?歩美!!
そう思って訴えるようにして歩美を見遣るけれど、当の歩美は甘えるようにして水野くんの腕に自身の腕を絡ませた。
「ねぇーえー、水野くん」
「?」
「亀とかハムスターもいいけどさ、あたしにも構って?」
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