第17話 勝利の余韻
ダンジョンの王を倒したことで、世界の一部はようやく平和を取り戻した。しかし、真生の心には不安が残っていた。王が死んだことで一時的にダンジョン内のモンスターの活動は収束し、数々の冒険者たちが新たな希望を見出した。しかし、真生にはそれが終わりの始まりに過ぎないことが分かっていた。
「これで世界が終わったわけじゃない。」真生は竹迫に向かって静かに言った。
竹迫は一瞬、真生の言葉の意味を理解することができず、首をかしげた。「でも、ダンジョンの王を倒したんだろ? もう怖い敵はいないんじゃ…?」
真生は黙って空を見上げた。澄み渡る青空には、まだダンジョンの王が残した影響が薄く広がっている。王を倒した直後の平穏な空気に、真生は何か違和感を覚えていた。
「確かに、ダンジョンの王のような存在は倒した。でも、ダンジョンはあくまで一つの封印に過ぎない。俺たちが見ている世界の裏側には、まだ未知の力が眠っている。」真生は深く息を吐き、目を細めた。「そして、それは俺たちの力だけじゃどうにもならないかもしれない。」
竹迫はしばらく真生の言葉を反芻した後、少し迷ったように口を開いた。「…それでも、今は一休みする時なんじゃないか? みんなが少しでも安心できる時期を作るべきだろ。」
「もちろん。」真生は頷きながらも、その目はどこか遠くを見ているようだった。「でも、覚えておけ。もし次に何かが起きた時、俺たちがそれを阻止するための準備ができているかどうかが重要だ。」
その時、突然、村の遠くから轟音が響いた。震動が地面を揺るがし、空気が張り詰めるような感覚が二人を包み込んだ。
「なに?」竹迫は身構えた。
真生はその振動を感じ、すぐに反応した。「ダンジョンの王の影響がまだ残っている…いや、それ以上の何かだ。」
その場で何が起こったのか、しばらくはわからなかったが、すぐに町にいる人々が一斉に慌てて走り始めた。街中に広がった激しい風の音、そして空を裂くような閃光が発生した。
「何かが、また動き出した。」真生は眉をひそめて呟いた。「この力、感覚的にダンジョンの王とは違う…。もっと、古い力が呼び覚まされている。」
竹迫もその異常に気づき、深く息を呑んだ。「それが、最初の兆しなのか?」
「いや、これからが本番だ。」真生は目を鋭くし、拳を握りしめた。「おそらく、この振動の正体は…ただの始まりに過ぎない。」
その時、真生の持っていた「無限経験値」のスキルが微かに反応し、異常なエネルギーの波動を感じ取る。それはまるで、未知の力がダンジョンを超えて世界を飲み込もうとしているかのようだった。
「何かが、俺たちの世界を動かそうとしている。」真生は低く呟いた。
「それが、俺たちにとっての試練だな。」竹迫が決意を込めて言った。
二人は再び立ち上がり、新たな目的地に向かって駆け出した。周囲の冒険者たちも、真生の異変に敏感に反応し、次々と集結し始めていた。だが、真生の心には不安が募っていた。
「ダンジョンの王を倒しただけでは、世界の秩序は戻らない。」真生は静かに心の中で誓った。「次に待ち受けている敵は、俺たちが今まで経験したどんな強者とも違うだろう。だが、俺たちはそれを乗り越えなければならない。」
その不安の中に、確かな覚悟が宿っていた。真生は竹迫と共に、次なる未知の強敵に立ち向かうため、足を踏み出した。
「真生、今度こそ、この世界を守るために戦おう。」竹迫が言った。
「そのために、俺たちは強くなるんだ。」真生は力強く答え、二人は再び冒険の道へと足を踏み出した。世界を揺るがす新たな脅威に立ち向かうために。
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