彼女たちのグーパンチ!

だくり(らるむ)

浮気夫にパンチ!(1)

「さ、さくら……どうして……」


「忘れ物を取りに戻ったんだけど……それに、どうして裸なの? この時間は営業に行ってるはずじゃ──」


「ねぇ、カズく〜ん。どぉしたのぉ」


 寝室から出て来た女を見て、私は息を呑む。


「あれれ?」


 女は一瞬驚いたようだったが、すぐに笑みを作った。


「誰かと思ったら、奥さまじゃないですかぁ」


「ど、どうしてアナタがここにいるの? それに下着姿で、一体何を……」


 女は人差し指を顎に当てると、大きな目をパチクリさせる。


「それ、本気で聞いてます? だとしたらぁ、奥さまって鈍いでよぉ」


 女は夫の腕にしがみつく。


「見ての通り、ワタシたちてるんです。気がつきませんでした?」


「お、おい! 何言ってんだよ!」


「だってぇ、事実だから仕方ないでしょ」


「だからって……」


「カズくんだってぇ、奥さんよりワタシの方が良いって言ってくれたじゃない」


 青ざめる夫、余裕しゃくしゃくの女──


「ひどい! 浮気してるなんて!」


 私は両手で顔を覆い、膝から崩れ落ちる。

 この場面だけを見れば、きっと私は、夫に裏切られた哀れなサレ妻──ということになるのだろう。


 少なくともこの泥棒猫は、そう思っているはずだ。


 だけど、そうはいかない!


 私は覆った手の中で、そっとほくそ笑む。


(覚悟しなさいよ。これからお前らを、地獄に叩き堕としてやるから)

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