エターナルギア
名波 路加
プロローグ
男は高級腕時計には興味がなかった。父親からは色々と指南されたが、結局のところ、時計は見栄の為に身に着けるものだと理解した。少なくとも、男が父親から譲り受ける会社では見栄が全てのように思えた。だからこのような飾りも必要なのだ。
男は店員に分からぬ程度にため息をついたつもりだったが、見抜かれていたようだった。
「興味が持てないと、面白くないですよね。でもね、お客様。私もこの業界のプロでございます。せっかく高価なものを身に着けるのですから、一つ興味を持っていただけるお話を致しましょう」
「それじゃあ、せっかくだから聞かせてよ」
「そうですね⋯⋯。ご予算に合った時計でしたら、こちらがおすすめですよ。機械式で、とても精密な構造になっています。これの構造が実に面白いのです」
男は笑みを浮かべて頷くが、退屈であった。
「高級腕時計ですからね。そこらの時計よりもうんと精密に作られています。驚くべきはその中に組み込まれた歯車で、なんと四百年に一度しか動かないものもあるんですよ」
男の目がほんの少しだけ見開いたのを、店員は見逃さなかった。
「機械式ですから、数年に一度はオーバーホールが必要ですし、永久的に動くわけではございません。それでも、そんな歯車が組み込まれている事に、ロマンがあると思いませんか」
「⋯⋯そうだな。その時には俺は死んでいるけど、本当にその歯車が動くのかどうか、俺の子孫にでも見てもらいたいね」
男は上機嫌に店をあとにした。
店員は男に売ったものと同じ腕時計を手に取り、眺めた。
「四百年、か。それくらいなら、まだ可愛いものだ。世の中には、もっと果てしない時を経て動く歯車があると聞いたことがあるからね。何処かの古代文明の、ええと⋯⋯何の歯車だったかな⋯⋯」
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