第2話:封じられし記憶の目覚め

天が裂けた——。


空を覆っていた雲が、まるで見えない手によって引き裂かれるように割れ、黄金の光が大地に降り注ぐ。

その光は温もりなど一切なく、むしろ 威圧的 だった。


それは、何かが迫ってくる という宣告。


——違う。


これは "何か" ではない 。


「人の身にありながら、我ら神々を欺き(あざむき)続けた罪深き者よ——」


耳をつんざくような声が、天上から響き渡る。


「お前を生かしておくことはできない」


村の広場にいた人々が、一斉に 俺を見た 。


「な……何が起こっているんだ……?」


「お、お前……まさか神の怒りをかったのか?」


恐怖の色に染まった視線が俺に突き刺さる。


長年親しくしていた隣人たちですら、まるで 疫病を持つかのように後ずさっていく 。


「待て、俺は何もしていない! 俺はただの村人Aだ!」


必死に叫ぶ。


だが—— 誰の耳にも届かない 。


黄金の光が形を成し、天から降り立つ影。


—— 天使 。


六枚の翼を広げ、冷徹な眼差しで俺を見下ろしている。

身にまとう黄金の鎧は、 処刑人 のような威圧感を放っていた。


「汝の存在はこの世界の秩序を乱す。裁きの刻が訪れた」


天使が 剣を振り上げる 。


「やめろ!!」


村人たちは悲鳴を上げ、逃げ惑う。


しかし、俺は動けなかった。


—— なぜ、俺が裁かれなければならない?


剣が振り下ろされる瞬間、時間が止まったかのように感じた。


次の瞬間—— 光が俺をのみ込んだ 。


……はずだった。


痛みがない。


目を開くと、天使の剣が 砕け散っていた 。


「……なに?」


俺の手は何もしていない。


だが 何かが俺を守った 。


村人たちの視線が 恐怖 から 疑念 に変わる。


「お前……本当にただの村人Aなのか……?」


世界が 俺を拒むようにきしみ 、頭の奥で何かが弾けるような感覚がした。


それは——


記憶 。


脳裏に、見たこともない 光景 が鮮明に流れ込む。


黒い空。

天を覆う赤い月。

天へと伸びる無数の光の柱。

その周囲を囲む 数多の神々 。


「封じねばならぬ。この者が目覚めれば、世界の均衡が崩れる」


「神の理(ことわり)をも覆す存在……我らにとって、最大の脅威」


—— これは俺の記憶なのか?


理解が追いつかない。


しかし、俺は 確かに見た 。


巨大な魔法陣の中心に 囚われた自分 の姿を——。


何百、何千もの封印術式が俺を縛り付けていた。


「——封印を施す。二度とこの力が目覚めることはない」


神々の声が響く。


俺の体は 光に包まれ 、そして——


俺は ただの村人Aとして生まれ変わった 。


「違う……俺は最初から、ただの村人Aなんかじゃなかったんだ……!」


——その瞬間。


俺の体を 縛る何かが砕け散る 。


天を突き破るような力が 溢れ出し 、地面が震えた。


「封印が……解ける!?」


天使たちの焦りが伝わる。


だが、もう遅い。


俺の 体の奥底から、圧倒的な熱が込み上げる。


これは—— 力だ 。


全身の血が沸騰するような感覚。

骨がきしむ音が響く。


「う……ああ……っ!」


封じ込められていた 何か が 解放される。


—— 記憶が蘇る。


神々が俺を 封印した理由 。


俺は、かつて神々と並び立つほどの存在だった。


——それをも超える力を持っていた。


「俺は……何者だったんだ……?」


俺の体から 黒いオーラ が吹き出し、世界が震える。


「な、何だ……この力は!?」


天使たちが後ずさる。


「封印が解け始めている……!」


天は裂け、稲妻が走る。


そして、俺は 覚醒しはじめた。


—— その瞬間、世界の理がゆがんだ。


空に浮かぶ 無数の光の槍 が、俺へと向かって放たれる。


それらは 神罰 だった。


しかし——


「遅い。」


俺が 手をかざした 瞬間、すべての光が 静止し、霧のように消えた。


天使たちの動きが止まる。


「ありえない……神の裁きが効かぬなど……!」


俺は ゆっくりと前へ踏み出す 。


そのわずかな動きだけで 大地が軋み 、村人たちが悲鳴を上げる。


「やめろ、そんな力を使うな!」


天使の一体が 剣を振りかざし、超速で俺に向かってくる 。


——だが、遅い。


俺は 軽く息を吐き 、 無造作に拳を振るった。


ゴォッ!!


衝撃波が走る。


次の瞬間、天使は 跡形もなく弾け飛んだ。


「な、何が……起きた……!?」


残った天使たちが後ずさる。


「封印が……完全に解けた……」


俺は 彼らを冷たく見下ろし、静かに言った。


「神々よ……これが、俺の力だ。」


空が裂け、 黒い雷 がとどろく。


「貴様らは俺を裁くと言ったな……ならば、俺も裁きを与えよう。」


俺の 一言 で、世界が揺れる。


これが、

俺が封じられた理由——そして、物語の始まりだ。

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追放された村人A、実は神を滅ぼす存在でした 蒼獅 @neonninja

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