十四本目 将来性
「いやぁ~災難でしたねアルティさん。――あ、コレ報酬金です」
「だなぁ……——ありがとう」
東の雑木林で異変があり、帰還した俺達。
とりあえず、ブランの勧めで雑木林での出来事を報告し、ゴブリン・オーク・ハーピィ・キメラの
正直、
――なんでも、俺達が出発したあとに、ギルドに『東の雑木林』付近にゴブリンが出没したと行商人から報告があったそうだ。
故に、すぐに『東の雑木林』の調査が
俺達は、その
———まぁ、ブランありきの達成認可だろうけどなぁ……
ぶっちゃけた話、銅級の俺だけが報告したとて、等級による信頼もなくて却下ないし——別の調査隊が組まれて、依頼達成の真偽が調べられてただろう。
———
そんなことを考えながら受付を離れると……
「お願いしますっ!!」
ブランの足元で土下座しているキイラが目に入った。
「……」
ちなみに、周囲の目線を良くない意味で集めているブランは、無表情ながらに、ほんの少しだけ疲労感を滲ませている。
「なにがあったんですかぁ~?」
すると、受付から出てきた受付嬢が俺の隣で、騒音の正体を確かめていた。
「あの新人、例の雑木林で助けたんだけど……俺達……というか多分ブランの強さに感銘を受けちゃって……『パーティに入りたい』って」
「それをブランちゃんは?」
「それが、俺の時とは違ってあの新人……キイラの加入を却下したんだ」
そう、ブランの拒否がある意味、今の事態を引き起こしていた。
「俺の時みたいに組めばいいのに……どうしたんだろうなブランの奴……」
そんなことを呟くと、隣の受付嬢に深いため息をつかれた。
「まぁ、アルティさんはブランさんに勝ってますからねぇ」
「あれは魔法ナシでの話だろう? ――ブランが俺の剣術を評価していて、将来性を感じてくれているのは嬉しいけど……俺とあの新人、『冒険者』としての有望性はどっこいどっこいだと思うんだけどなぁ……」
「う~ん、アルティさんはまず、その甲斐性の無さから克服しないとですねぇ」
「なんでディスられてんの俺!?」
『ではでは~』と受付に帰っていく受付嬢に、俺は少しだけ涙を流しながら見送る。
「お願いします!!」
「……ダメ。パーティへの加入は認められない」
一体何回目のやり取りだろうか。――俺の口から、自然とため息が漏れた。
「…………はぁ」
周囲の関心を巻き込んで押し問答をしている若者を見かねて、俺はキイラの傍で膝を折る。
「キイラ、今日はもう遅い。――今日が初めての
「えっ……で、でも僕何も……」
俺のまさかの提案に、土下座も忘れて報酬の受け取りを拒否するキイラ。
そんなキイラに、俺は小袋に分けたお金を握らせる。
「いいからもってけ。――分け前は俺と同様少ないが……お前も確かに俺を助けてくれたんだ。受け取ってくれ」
「で、でも……」
「いいから。――冴えない先輩の冒険者になった祝い金だ」
「……!!」
俺の言葉に、キイラは少しだけ目を見開く。
「これで良い飯を食うなり、装備を整えるなりするんだ。いいな?」
「…………わかりました。――このお金……大事に使います!!」
しかし、すぐにいつもの明るい笑顔に戻ると、キイラはそのお金を大事そうに抱えた。
「お騒がせしてすいませんでした!!」
そういって俺達含め、周囲の人間に頭を下げたキイラ。
「……」
俺も——おそらく隣のブランも、『やっと帰るのか……』と思った次の瞬間――
「
「「!?」」
衝撃の一言を言い残して去っていった。
「……」
「……」
周囲は嵐のように去っていった少年のことなど忘れたように喧騒を取り戻す。
一方、そんなことを言い残されたブランは、辟易とした様子で机に突っ伏した。
「ダメなのに……」
寝不足でもないのに、ブランの目の下に深い隈が見えたのは幻だろう。
「……」
そんな彼女の様子を見かねて、俺はテーブルに座りながら、口を開く。
「で……なんでダメなんだ? ――将来性って観点なら、俺より有望なんじゃないか?」
「……馬鹿言わないで」
突っ伏した顔を上げ、顎をテーブルにくっつけたままブランは訝し気に俺を見つめた。
「アルティの剣術はそこらの『有望な冒険者』なんかよりよっぽど価値がある」
「………………お、おう……」
な、なんかムズ痒いな……
「アルティの場合は、『魔法』という苦手分野を克服すれば、
「そう言い切られると、なんだか嬉しいような、プッシャーのような……」
俺自身に全くその実感はないが——ブランの中の俺の評価が想像の十倍高くて、俺は困ったように頭を掻いた。
「だから、『魔法』が使えるようになれば、
「……」
いや、コレ——過大評価で俺、殺されない……?
「そんな旅に、ただ『有望』ってだけであの子を連れてはいけない」
「……ま、まぁ、ブランが入るような
何となくブランの考えは分かった。
「……」
だが、俺自身……キイラに可能性を感じていた。
その理由は、俺を助けた時の——あの異常な威力の『魔法』だ。
『魔法』はからしきな俺では説得力も、魔法の威力に関する感覚も当てにはならないが……それでも、俺の中では、キイラには何か……『光るもの』があるように感じていた。
「なぁ、ブラン?」
「……なに」
若干不機嫌がにじみ出るブランに、俺はある提案をした。
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