物語の終わりを


 自爆。


 最後の最後に選んだ俺の選択肢は、それであった。


 元々、魔王プラス四天王を相手にしていた時から狙っていた作戦。


 死ぬ寸前に捕まえて、一緒に死のうぜヒーハー!!をすることを狙っていた。


 とにかく当たる瞬間を街に待ち続けたのだが、結局その瞬間は訪れず。


 気がつけば、この瞬間まで引き伸ばしてしまった。


 だが、確実に当たった。


 魔王のビルドも判明済みであり、耐久力も高いが固定、貫通ダメージを軽減するようなものはなし。


 たとえ罪の力があったとしても、ゲームのシステムからは逃れられない。


 固定ダメ、貫通ダメというのは、この世界の法則そのものなのだ。


 木から離れたリンゴが地面に落ちるように、バットで打ち返したボールが飛ぶように、この世界における、1つの理論なのである。


「ごはっ........」

「........おはよう魔王様。今回の目覚めは気分がいいな。そっちの気分はどうだ?」


 5回目の復活。これで今日の復活はもう無い。


 タイマンのための空間も一度死んだことにより解除され、サリナもこの状況を見ることが出来る。


 足は奪った。あとはとどめを刺すだけだ。


「貴様........」

「おっと、回復はさせないぞ。というか、ラスボスが回復をしたらダメだろ」

「ごはっ!!」


 翼はもがれて、全身がボロボロ。


 身体中から血を吹き出して、腕も片方吹き飛んでいる。


 そんな状況でも、魔王は決して諦めずに回復をしようと魔法を使った。


 が、流石にそれは見逃せない。


 ここで回復されたら、これまでやってきたことが全てパーになるだろうが。


 吹き飛ばされ、地面を弾む魔王。


 今の一撃を避けたり耐え切るだけの力は無いらしく、魔王は力無く地面に横たわる。


 終わりだ。


「グリード。自爆するとか私が許すと思ってんのか?」

「そうしないとどこかでミスして負けてるよ。我慢して。世界の為だ」

「そのセリフ、悪役が市民を犠牲にする時に言うセリフだろ。自分を犠牲にするな」


 サリナはそういいつつも、魔王が起死回生の一手を打てない様にメルトちゃんをけしかける。


 魔王は既に罪の力を使えていないのか、メルトちゃんはすんなりと魔王を口に加えることに成功した。


 殺しはしない。最後なのだ。


 遺言のひとつでも聞いてやるべきだろう。


「随分とボロボロになったな?今の方がかっこいいぜ」

「ほ、ざけ」

「言葉を発する事すら難しいか。魔王ゼルゼ、最後に言い残すことはあるか?」

「........」


 魔王も分かっている。


 この状況で何をしようとも無駄であると。


 自爆しようとしたとしても、その前にメルトちゃんが全部喰らい尽くす。


 俺もそう簡単には死なないし、サリナも防御が間に合うだろう。


 チェックメイトだ。


 終わりはすぐそこにある。


「我が........我が死のうともこの世界は悪いに満ち溢れている。真の平和が訪れると本気で思っているのか?」

「まさか。俺はこの世界が滅びなければそれでいいんだよ。俺はそれを平和と呼ぶ。どっかの知らん場所での戦争なんざ知ったことか」

「アッハッハッハッハッ!!真の平和を求めるなら、この世界の生物は皆滅んだ方がいいだろ。人類も、魔族も、魔物も、私達罪も。それは、グリードが望む世界じゃないわな」


 世界の平和のため、人類のためなどと口にはしてきたが、結局はストーリーだからと言うのが理由の大半。


 勇者が本来死ななかったはずの負けイベで死んだから、俺が勇者になるしか無かったのだ。


 そうしなければ、人類は滅ぶから。


 人類が滅ばないならば、俺は人類が何をしていようが別に興味が無い。


 勇者のフリは疲れるね。


「それが勇者なのか........?」

「俺は生憎、勇者のフリした一般人でね。真の勇者とは違って、真に世界平和なんて望んじゃない無い。でも、フリをするのも悪くないとは思うよ」

「勇者様!!」


 そんな事を話していると、後ろから声が聞こえてくる。


 振り返れば、そこには多くの人々の姿が。


 始まりの街で出会った人々や、王都で出会った人々、その他にも、旅の中で出会ってきた人々が俺の元へと走ってくる。


 お、ゼーロン生きてるじゃん。マジで勝ったのあのオッサン。すげぇな。もうアンタが勇者でいいんじゃね?


「こうして、出会えたものもあった。かけがえのないものを見つけることも出来た。勇者のフリも悪くないね」

「........こんな者に、負けるとは」

「お前が素直に首を差し出せば、まだ魔族との交渉はあったかもね。喜べよ。残りの魔族もみんな、お前の元に送ってやる」

「ふっ........勇者とは到底思えん発言だ」


 魔王はそう言うと、それ上話す気力は無いのか下を向いて目を閉じる。


 長かった。本当に長かった。


 勇者が死んでから約六年。


 旅を始めてから一年。


 時間だけで見れば少ないが、俺の中ではあまりにも長すぎる旅だった。


 始まりは勇者が死んだあの日から。


 あの日から俺は、勇者になったのである。


 そしてその役目は今日この日、終わりを迎える。


 出会いと別れを繰り返し、思うように行かないストーリー攻略は、紆余曲折ありながらもここに辿り着いたのだ。


「さらばだ魔王ゼルゼ。この勝負、俺の........いや、人類の勝ちだ」


 俺はそう言うと、一切の躊躇いもなく棺を魔王に叩き込む。


 既にボロボロになっていた魔王の身体は見てられないほどに砕け散り、そこに生命の伊吹は感じなかった。


「........」

「終わったな」

「そうだね。終わったね。長く苦しく、そして楽しく、面白い旅だったよ」

「そうだな。楽しい旅だった。人として1つ、成長できた気がするよ」


 サリナはそう言うと、メルトちゃんを隠して俺の頭を優しく撫でる。


 何もかもが思い通りに行かず、気がつけばサリナとかいう規格外との2人旅。


 今思えばサリナが居なったら間違いなく勝ててない相手だ。


 俺以外の転生者がいたのも予想外だったし、転生して楽しく旅をしようと思っていただけだったのになぁ。


 どうしてこうなってしまったのやら。


「これで人類を脅かす者は消えたのか?」

「少なくとも、ここで物語は終わるよ。勇者は魔王を討ち滅ぼし、英雄として国に称えられ、綺麗なお嫁さんを3人貰って幸せに暮らすのさ」

「なんだ。あと二人欲しいのか?私で我慢しろよ」

「いや、物語上の話しね?俺、サリナ以外に惚れる気ないから」


 勇者の物語は終わりを迎えた。ならば次は、俺自身の物語を始めるべきだろう。


 でもその前に、色々と報告しなきゃならん人が多いな。


 花屋のユナに会いに行って、村に帰ってシスターにも報告しないと。


 それと、国王にはクレームだな。皇太子殿下を送ってくるんじゃねぇ。死んだらどうするつもりだったんだよ。


「さぁ、行こうかサリナ。勝どきを上げるにはまだ早い。非戦闘員の魔族達も殲滅しないとね」

「徹底してんな。だが、戦争とは恨みしか残さない産物だ。そんなものは消すしかない。だが、今この時だけは、拳をあげてもいいんじゃないか?魔王討伐だぜ?先代でも出来なかった、英雄の偉業だ。少なくとも数百年は、人々に語り継がれるだろうよ」


 ........それもそうか。


 魔王を倒したのだ。ならば、俺は拳を振り上げてそれを宣言しなくてはならない。


 勇者として、最後の仕事だ。


「勇者グリード!!魔王を討ち取った!!我々の、勝利だぁぁぁぁぁ!!」

「「「「「「オォォォォォォォォ!!」」」」」」


 魔王は死に、人類が絶滅する未来は潰えた。


 ストーリーは終わったのだ。


 イレギュラーだらけで何もかもが滅茶苦茶で、原型など留めていないストーリー攻略はこれにて終了。


 お前の義務は果たしておいた。精々あの世で、俺の旅路でも見ておけよ勇者アレン。




 後書き。

 次回、最終回。

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