第13話
セルリックは浴室の扉を器用に足でこじ開けた。浴室に入ると暖かい湯気に包まれる。奥には大きな鏡がある洗い場と、さらに奥にとてつもなく大きな白いバスタブがあった。これなら二人で同時に入れそうだ。
久しぶり?のお風呂にボクはちょっと緊張してしまう。
(あれ?体ってどう洗ってたっけ?まずは腕?脚?胴体?それとも頭?そもそもボクっていつからお風呂入ってないんだろう?)
体を洗うという行為をしなさすぎて混乱してきたボクををセルリックは腰掛の上に座らせる。
(どどどどうしよう何からすれば……!)
「なに体洗うくらいで気ぃ張ってんだよ」
体が強ばってしまったせいでセルリックに気持ちが伝わってしまったようだ。
「だ、だってボクってどれくらい寝てたのか分からないけど久しぶりなんだもん。そもそもボクってお風呂入れる環境だったのかも分からないし」
前にボクは自分のことを物乞いなんじゃないかと思ったくらいなのでもしかしたら湯浴みなんてしたことない奴だったりするのでは?と深読みしてしまう。それにこんな立派な風呂なんぞ貴族しか入れないだろうに。
「なんで風呂ひとつにそんなこと考えるんだよ。今どきガキでも一人で済ませられるってのに。はあ、仕方ねぇなぁ、俺が洗ってやる」
呆れた様子で持ってきた桶でお湯をくみ上げると僕に指示する。
「ライ、目を瞑れ」
「え?あ、はい……!」
僕は直ぐにセルリックのやることが分かり、急いで目を閉じる。するとすぐに頭にお湯をかけられた。暑すぎず丁度いい加減のお湯だ。
「…………もう目を開けていい?」
「ダメだ、洗い終わるまで閉じてろ」
その言葉と共に頭にひんやりとする液体を少量かけられた。多分洗髪剤だと思う。その液体は思った通り泡立ってきてボクの頭を満遍なく覆う。セルリックはゴツゴツとした大きな手を使って荒っぽく僕の頭を洗っていく。ちょっと痛い。
セルリックの手が離れたかと思うとまた盛大にお湯をかけられ、「もういいぞ」と目を開ける許可を貰う。
目を開けると目の前の鏡にはびちょ濡れの美青年がいた。相も変わらず面だけは良い。まさに水も滴るいい男ってやつだ。
「せっかくだし体も洗ってやるよ」
いつの間にかセルリックは小さなタオルに石鹸で泡を作っていた。それを後ろから唐突に僕の体に塗りたくり、ごしごしとタオルで洗っていく。
いつものタオルで軽く擦るだけとは違いちゃんと洗われている感じがする。
首、背中、腕、脇と洗われていき、ちょっとくすぐったい。でも今笑ったりしたら真面目にやってくれてるセルリックに悪いと思い、我慢する。でもやっぱりくすぐったくてちょっと下を向いてこらえる。するとボクはあることに気づいた。
ボクのペニスが少し頭を上げているではないか。
(え……なんで……!?)
驚いてボクは驚きの声を上げそうになるが何とか踏みとどまる。一体どうなっているんだと考えると脳内であのセルリックに犯された光景が浮かんだ。
そう、あの疼きを思い出してしまった。多分ボクは気にしてない風を装っていたがやはりセルリックと裸でお風呂に入ることにどこかで意識してしまっていたのだろう。最初は多少の緊張感で抑えられていた感覚は暖かく気持ちのいい湯加減に絆されてリラックスしてしまい、その無意識はボクの体に現れてしまったのだ。後ろから洗われているから今のところセルリックにはバレていないが……これはまずい。非常に。
(お、落ち着け……落ち着けばきっと……)
落ち着けと頭で唱え続けるが一度意識してしまえば体は素直なもので触れられている柔らかいタオルに滑る泡の感覚を感じ取り、より芯を持って固くなっていく。
もしあの泡のついた大きな手で陰部に触れられたら……なんて考えてしまうとより一層下腹部が熱くなる。
僕は思わず前かがみになり、自らの昂りを隠すようにする。
「おい、何やってんだ。それじゃ前が洗えねぇだろうが」
「ボクっ……あとで自分で洗うから……!」
「はあ?何言ってんだよ。こら!縮こまんじゃねえ!」
ボクはダンゴムシのように体を折り曲げる。しかし何事か分からないセルリックはボクの体を力任せに引っ張った。生憎ボクは筋骨隆々なセルリックに対抗できるような力は持ち合わせてはいない。それ故にボクはあまりの力に後ろにひっくり返る。
「うわっ……!」
「あぶねっ!!」
セルリックはボクの体を受け止めてくれたようだ。しかしそれによって隠し通したかったボクの恥部はあっけなく晒されてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます