転生したらスク水しか制服がない世界にいた件
あおきりょうま
第1話 エロゲ世界のモブとして転生してしまった!
転生したらそこはヴェネツィアだった。
「……え?」
現代日本のブラック企業で30連勤の残業100時間越えの生活をしていた俺はその生活がたたってとうとうお亡くなりになってしまった。
そうなると普通はファンタジーの剣と魔法の世界に転生しそうなものだが、俺の目の前に広がっているのは石畳と運河とゴンドラの、日本から遠く離れたイタリアの港町の光景だった。
「どういうこと……それにここって……」
と、気が付く。
自分の声が甲高くなっていることに。
「え⁉ あ……何だよこの格好⁉」
下を見てみる。
そこには自分の男らしいスーツ姿があるはずだったのに、今は違う。
女の体だ。
しかもツルペタの薄い貧相な姿。
それにコスチュームもスクール水着だ。
「え⁉ ええ⁉ 女の子の体になってる⁉ これってどういうこと⁉」
すぐ近くの水路に自分の顔を反射して見てみれば、自分とは全く似ても似つかない茶髪ロングヘアの美少女になっていた。
「この顔……どこかで見覚えが……?」
十四歳ぐらいのこのどこか幼い少女の顔は何か既視感が……。
そんなことを考えていると、
「お~い! サクヤちゃーん!」
俺へ向かって手を振って来る黒髪の少女が声をかけて来る。
「えぇ……お前もスク水……?」
彼女の格好も、同じようにスクール水着で、その上学生カバンを抱えているヘンタイチックな格好だった。
「? スク水? 何を言っているのサクヤちゃん。これはマリンヶ丘高校の制服でしょう?」
マリンヶ丘高校……?
それもどこかで聞いたことが……。
「ああああああ~~~~~~‼」
思い———出した!
「何……いきなり大きな声出してびっくりするじゃないサクヤちゃん」
「ここって! レースゲームの『スク水だらけのマリンレース』ってエロゲーの世界じゃん!」
『スク水だらけのマリンレース』というのは18歳未満プレイ禁止のパソコンゲームで、その名の通りスクール水着好きのヘンタイの需要に応えるためのゲームだ。
だがそのゲームは普通のエロゲーではなかった。
レースゲーム要素があるのだ。
普通のエロゲーはノベルゲーでひたすらシナリオを読み進めて意中の女の子の好感度を上げて恋愛関係になりHをすると言うゲームなのだが、この『スク水だらけのマリンレース』はノベルゲーではなくどちらかと言うと対戦ゲームだ。
ベネツィアをモデルにした水の都:アク=アクを舞台に、水を取り込み内部で核融合させてエネルギーにしている超未来エンジン搭載ボート【アクアトレック】を駆り、水路を疾走するマリンレースが大流行りしている世界観で、あまりにも流行りすぎていてすべての物事をマリンレースで決めるという頭のおかしい世界だ。
政治も宗教も戦争も、全ての争いごとが起きれば、「だったらマリンレース」の結果で決めようという世界観。
だから学校でも習わされるし、学校ではいつでもマリンレースができるように制服がスク水になっている。
でもだったら……!
「せめて男の方に転生するだろうが……!」
『スク水だらけのマリンレース』はエロゲーなので当然Hをする相手、男の主人公が存在する。
そして、この世界は男尊女卑極まれることに男は普通のブレザーの学生服で、女の子だけスクール水着の世界観なのだが誰もそこに突っ込む人間はこの世界にはいない。
ならせめて男の方で転生したかった。
その上———、
「このキャラ、メインでもなければサブでもない、攻略できないモブ同然のキャラじゃねぇか……」
俺が転生した先の姿はそのゲームのメインキャラクターではない。
目の前にいる黒髪で大人しいおしとやかヒロイン、ツバキ・ヤイバちゃんの親友キャラというポジションでにぎやかしにしかならないキャラクターだ。
———サクヤ・ビンテッド。
生徒手帳を見る。
初めてフルネームを見る。
このゲームをプレイしたことがあるのに。
だってそうなるだろう。
このキャラはモブキャラみたいなもんだったんだから。
「こんなモブキャラなら仕方がない……どうせ無双なんてできないだろうし、大人しく粛々とした学生生活を送るとしますか……」
と、俺は生徒手帳に書いてある、転生先のキャラクターのアクアヶ丘高校の生徒手帳に書いてある学生証を見る。
『サクヤ・ビンテッド 性別:女 レベル:5 登録トレック:スピラーレ
スキル:ボスキラー』
レベル? スキル?
この世界はゲーム世界だからレベルとスキルがあるのだろうか?
だけど、レースゲームの世界だから、そんなものは必要ないような気がするが……。
一体どういう事なんだろう?
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