第七話:決着!
深海の闇の中、UXX334の漆黒の艦体が不気味な軌跡を描きながら前進していた。
ネクス艦長は不敵な笑みを浮かべ、モニター越しに乱流が漂っている海底に衝突し た伊400の影を見つめる。
「……終わりだ、日下艦長」
「このまま突撃だ! 魚雷全門開放、至近距離からの零距離射撃で仕留める」
「了解! UXX334、全速前進!」
静寂の深海を切り裂くように、UXX334が鋭い軌跡を描いて突進する。
伊400の残骸らしき物は沈黙していた。
ネクスは確信した。
伊400は、もう逃げられない。
今度こそ完全に仕留める。
「これで終わりだ、日下! 貴様に祈りをささげてやる」
だが、その瞬間だった。
伊400の船体が、まるで幽霊のように静かに姿勢を変えた。
「!?」
ネクスの表情が凍りつく。
「艦長! 敵艦、微速前進! いや、違う……こっちに照準を合わせています! か、荷電粒子砲だ!」
「なに……!?」
ネクスの背筋に、冷たい悪寒が走る。
武御雷神の矛が、まさにUXX334の真正面へと向けられた。
「まさか……!!」
次の瞬間……!
大気に轟く凄まじい咆哮の如く光の束が放たれたのである。
蒼白い閃光が、深海を切り裂いた。
「なっ!?」
伊400の切り札である武御雷神の矛が、UXX334を捕捉し、光の奔流が一瞬にして艦体を包み込んだ。
圧縮されたエネルギーが艦体表面に炸裂し、装甲を一瞬で蒸発させる。
超高温の電磁波が船体を貫通しながら艦内の配線を焼き切り、凄まじい爆発が連鎖的に発生する。
「ぎゃあああああああッ!!」
ネクス達の断末魔の叫びが、艦内通信に響く。
「熱源警報! 装甲融解! 制御不能!!」
「ダメだ! 機関が……爆発するッ!!」
UXX334の艦体が、裂ける。
巨大な光の柱が深海に轟き、UXX334はまるで閃光に飲み込まれるように溶解しながら消滅した。
艦体が崩壊し、火花が水中を漂う。
そして……ネクスの声が、音とともに闇へと消えていったのである……。
♦♦
閃光が消えた後、深海には静寂が戻っていた。
モニターには、粉々に砕け散り、海底へと沈んでいくUXX334の分子レベルの残骸が映し出されている。
一瞬の沈黙……そして、次の瞬間、伊400艦内に歓声が響き渡った!
「やった……! やったぞ!!」
「武御雷神の矛、直撃! 敵艦、爆散しました!!」
「敵ソナー反応消失、完全勝利です!!」
歓喜の声がCIC(戦闘指揮所)を埋め尽くす。
乗員たちは拳を握りしめ、互いに喜びを分かち合っていた。
「伊400、戦闘勝利!」
「艦長、やりましたね!!」
橋本が笑みを見せながら日下に言う。
オペレーターたちの声が弾み、緊張にこわばっていた顔が一気に緩む。
誰もが信じられないような表情で、しかし確かな勝利を実感していた。
艦長席に座る日下は、深く息をつきながらも、静かに微笑んだ。
「ああ……これで、決着だ」
深海の闇の中、伊400は確かな勝利を刻んだのだった。
戦闘の余韻がまだ艦内に残る中、伊400はゆっくりと姿勢を立て直していた。
CIC(戦闘指揮所)では、歓喜の声が徐々に静まり、再び緊張感が戻りつつあった。
「艦長、この海域クリアを確認しました」
神薙が冷静に報告する。
日下は深く頷いてそのまま口を開く。
「戦闘は終わった! だが、任務はまだ続いている」
彼の視線が、メインモニターに映し出されるビスマルクの影へと向けられる。
海の闇の向こう、そこには未だ謎に包まれた沈没船が鎮座していた。
「航行ルート修正、ビスマルクに向かう」
「了解、進路変更、ビスマルクへ向かいます」
伊400の核融合炉が微かに唸り、巨大な鋼鉄の艦体が静かに深海の闇へと滑り込んでいく。
敵はいないが……しかし、ビスマルクが何を秘めているのかは誰にも分からない。
CIC内のクルーたちも、それを理解していた。
「……戦闘よりも、これからの方が怖いかもしれませんね」
誰かが呟いた。
だが、それを振り払うように、日下は静かに言った。
「行くぞ! 海の底に隠された真実を暴く」
こうして、伊400は改めて沈没船ビスマルクへと向かっていった。
そこで何が待ち受けているのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます