第26話

✻✻✻



「あっ……いい……っ!」

「……っ!」


 ワインレッドの唇が嬌声をこぼす。

 黒を飾った爪が肩を引っ掻いて、ぴりっとした痛みに僕は僅かに表情を歪めた。


 この女はいつもそうだ。

 いつもどうにか自分を奮い立たせて、憎き女の中を埋めてやるとき、いつも肩に爪を立ててくる。

 僕の肩にある多数の引っかき傷。この女と身体を繋げた夜を数えるかのように刻まれた傷だ。


「あぁ……っ、やっぱり、アンタ、最高だわ。私が、一番気持ち良く達せるタイミングを、よく分かってる……っ」

「──っ、僕は貴女の下僕。愛おしいご主人様に、精一杯の御奉仕を、するのが僕の役目ですから」

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