第5話

怖い。




風船が膨らむみたいに大きくなったその感情に

震えるしかできない自分が嫌になる。




私はいつまでたっても泣き虫で、弱虫だ。




そんな私を見下ろす男の人は

依然として笑みを浮かべたまま

あれ、と呟くと言葉を続ける。





「あきら、覚えてないの?

 3回くらい

 施設に浴衣届けに行ったでしょう」





施設、というのは

たぶん私が育った児童養護施設のこと。



幼い頃に両親を亡くした私は

身寄りがなくそこで育った。




そしてその浴衣、という言葉に

心当たりがある。

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