第2話

その瞬間、恐怖に飲み込まれた。




―――逃げなきゃ。




頭に浮かんだ考えは

足首を拘束する銀色のそれによって

呆気なく崩れ去る。





どうしよう、どうしよう。





すっかり恐怖に呑まれた頭では何も考えられなくて

それでも震えを止めようと

胸の前でしっかりと両腕を組んだ。




だけど

からだは言うことを聞かなくて

震えはひどくなる一方。


頭がぐらぐらする。




耐えきれなくなって涙が溢れた。





「ユキッ、ちゃっ!」





しゃくりあげながら

愛しい人の名前を呼んだとき

誰かが部屋に入ってくる気配を感じる。




思わず

自分を守るように体操座りをして

息を押し殺した。

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