玉響と泡沫

@t__8_ki

第1章

濫觴

第1話

目を覚ますと、知らない場所にいた。



暗くてよく見えないけど

自分が布団の上に寝ていることだけは

感覚で分かる。


けれどそれ以外は何も分からない。



ひどく静かで暗い空間だった。





「どこ…、」





そう呟きながら起き上がろうとした時

ジャラリ、という不吉な音と共に

足に違和感を感じる。



恐る恐る、かけられていた毛布をのけると

怪しく光る銀色のものが目に入った。




私の右足を拘束するソレは

日常まず目にすることのないもの。





「あし、かせ……?」





右足のみにつけられたそれは

動くことに不自由はないものの

鎖でどこかにつながれているようだ。


重く違和感のあるそれ。


どうして私がこんなものをつけられているのだろう。

その事実に悪寒がした。




その時、ハッとする。




思い出した

私は後ろから口を何か布のようなもので塞がれて

気を失ったんだ。


あれは睡眠薬?


そして今

右足を拘束する足枷。




『拉致』




頭にその漢字が浮かぶ。

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