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私は、一礼してカウンターに戻る。
まだマスターはニヤニヤしている。
「お嬢、ライバル増えそうだぜ?」
「は?」
ライバルってなに。
懐疑的な視線を送ると…。
マスターやカウンターに座る常連客がバレないように指を指す。
「あー…。」
理解した。
常連客の中でも比較的若めの男性が彼女を見て赤くなっている。
きっとさっきの笑顔を見たんだろうな。
それか前から気になってたとか?
「でもお嬢、珍しいな。サービスなんて。やっぱお気に入りは違うってか?」
「だから違うって。私はただ色々な配合のブレンドを作りたいだけ。あの人シュガー入り飲んでるのに、今日はマンデリン使っちゃったからちょっとね。」
「ま、そういうことにしとくか。そういや、始業式だったろ?どうだった。」
あー。
マスターは、私の親が海外にいるから保護者代わりだし、確か一年間の予定表持ってたっけ。
「別に何も。変化なんかあるわけないでしょ。相変わらず学校なんて退屈だし。」
「お前なぁ。」
何期待してんだか。
面倒くさいマスターなんかほっといて、チラリとあの人を見る。
サンドイッチを食べ、珈琲とバニラを一緒に食べてる。
今日は傍らにパソコンを置きながら。
社会人なのかな?仕事中?
やっぱりどうしてここに来るのか分からない。
珈琲が好きだから?
まぁ確かにマスターが騒ぐのも分からなくはない。中三から手伝ってるけど、その頃には既にだいたいに興味なんて失せてたし。
退屈すぎてイライラしてたし。
まぁ珈琲入れとかは貴重な数少ない趣味にはなったけども。
だから私がここまで他人に興味を抱くなんて驚きだろうし、勘違いもするのも無理ない。
まぁ気になってるし興味あるけど。
その枠から何かに発展することはないと思う。
だって私も彼女も同じ女だし。
仮に異性同士でも発展はないと思う。
いつか彼女がカノンに来るのが当たり前の日常になっていくと、自然と興味も失せていくだろう。
ただ今は珍しいだけ。
こんなところに女性が一人で来るこの状況が新鮮なだけ。
それだけなのだ。
それに私は彼女のことを何も知らない。
今は少しだけどんな人なのか知りたい気持ちはゼロではない。
でもいつかこの興味は失せていく。
私はここのバイト従業員で高校生。
彼女は最近来るようになっただけの謎の女性客。
たったそれだけの関係なのだ。
ここから何か発展なんて考えられないのは必然的。
そうでしょう?
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