第2話 説明が下手な俺と友だちになるってまじ……?

「……どうして深谷さんがここに……?」


 懐疑的な瞳を浮かべながら言葉を零すのは、言わずもがなの王子様。


 綺羅野さんと約束してから1日が経ち、俺達がいるのはファミレス店。

 机の上には大きなパフェが3つ。旬の果物を使っているのか、柿がベースだ。


「ちょーっと大和の欠けてるところを補ってもらおうかなぁって」

「オレの欠けてるところ……?というか失礼すぎない?」

「べっつにー?私のが欠けてるところなんて山程ありますー!」


 童貞の俺にイチャつきでも見せつけたいのだろうか?

 対面に座る2人は、肩をくっつけてしまいそうな距離感で話していた。


 昨日綺羅野さんが言っていたように、『彼氏ができそう』という言葉になんら嘘はないらしい。

 ……なんなら、ほんとに付き合ってないのか?と疑問を抱いてしまうほど。


 校内では結構有名な話なのだが、2人は幼馴染。

『美男美女が幼馴染とかどんな運命だよ〜』って学校中で騒がれているんだが、全く持って俺もそう思う。


 スプーンでアイスクリームを掬った俺は、2人のイチャつきを眺めながら頬張る。


「あ、そうだ深谷さんのことだよ。なんで君がここに?オレとなにか接点あったっけ?」


 顔もイケメンなら性格までもイケメンらしい。

 ただイチャつくだけではなく、こんな俺なんかに気を使ってくれる王子様に思わず惚れてしまいそうだ。


「接点はないっすね。けど、幼なじみさんにとあるお願いをされまして」

「……風華がお願い……?」


 手のひらで綺羅野さんを差せば、追いかけるように王子様の視線がマドンナへと向く。


 そうすれば、まるで『ご紹介に預かりしました!』と言わんばかりに、大きなお胸を張り上げた。


「そう!私がお願いしたんだよ!」

「……風華よ。主語がないからなんも分からん」

「あっ、たしかに」


「ごめんごめん〜」と言う言葉を付け加える綺羅野さんは、どうせ”わざと”なのだろう。


 当たり前のように頭が良い綺羅野さんが主語をつけないという間違いを犯すわけもない。というか、このわざとらしい光景を何度も見てきたから分かる。


 思わずジト目を向けてしまう俺なんて他所に、再度胸を張り上げた綺羅野さんはピシッと大和くんを指差した。


「大和に足りないもの。それは!察し能力!」

「……察し能力?」


 シワを寄せ、コテンと首を傾げる。

 けど、お構いなしに声を張り上げるのは綺羅野さん。


「そう!この鈍感野郎が!!」

「え、すっごい言うじゃん。幼馴染だよね?」

「それほどまでにあなたは鈍感なんです!」

「んなことないと思うけどな……」


 さっき大和くんが言った通り、俺達に接点なんて微塵もない。

 会話もしたことがなければ、俺が勝手に下の名前で呼んでるだけ。


 だから、大和くんの察知能力がどんなものなのかは今ひとつとしてわからない。

 ……”さっきまでは”。


 この数十秒でよーく分かった。

 この王子様が、どれだけ鈍感かってことが。


 まず!これだけ距離が近いのになんで綺羅野さんの好意に気づいていない?

『付き合いそう』それ即ちまだ付き合ってないということ。


 ってことは大和くんがまだ好意に気づいてないからであり、告白ができない状況にあるから。

 どうせ、ただの幼馴染止まりでもしているのだろう。


 小説やら漫画ではあるあるの展開……なんだが、俺が得意とする察し能力は『日常的な察し』であり、『恋愛的な察し』ではない。

 けど、察し能力検定特段の俺は、『恋愛の察し』もお手の物だ。


 柿を頬張った俺は大和くんに視線を向け、腕組みを披露する。


「でもまぁ大和くん。察し能力に長けていることになんの損もないよ」

「それはそうなんだけど……深谷さんに教えられるほどか?オレ」

「そうだね。教えることばかりだよ」

「そうなんだ……」


 苦笑を浮かべる王子様は、これまた整った顔面でパフェを頬張る。

 瞬間、辺りから集まる視線。そのほとんどが女性たちで、瞳にはハートマークが浮かび上がっている。


「あ、私も食べよ」


 そんな言葉を零した綺羅野さんもスプーンを手に取り、髪を耳にかけてソフトクリームを口に入れた。


 真っ赤な唇にくっつく白い液体は、どことなくエッチで、辺りの男性の視線をかっさらうのも頷ける。


「……俺の場違い感が拭えん……」


 目の前に居るのは美男美女。

 それに比べ俺は……陰キャ。


 自分で言ってて悲しいが、これは覆らない事実であり、イケメンになりたいと願っても変わることのできないもの。


 誰がどう見ても、『なんであの陰キャが美男美女と関わってるんだよ』とツッコんできそうなのに、誰も近づかないのはこの2人のオーラなのだろう。


「ん?深谷くんなにか言った?」

「……いえ、なんもないっす……」


 パフェが相当美味しかったのだろうか。

 察し能力底上げ作戦のことなど頭から抜け落ちた綺羅野さんは、これまた可愛らしく緩ました頬で柿を齧った。


「そういや風華って甘いの好きだったな?昔はよく食べに行ってたな」

「昔って言っても一週間前とかその辺じゃない?もうボケてきちゃってる?」

「……ボケはボケでも違うボケだよ。風華こそ察し能力に欠けてるんじゃないのか?」

「あっ、そうじゃん!察し能力の底上げに来たんだった!」

「…………オレの幼馴染はバカなのか?」


 呆れ交じりの言葉を吐き捨てる王子様は、こめかみに手を当ててため息を吐く。


 同じような動作を俺もしたかったのだが……さすがに二人して責め立てるのは可哀想というものが過ぎる。

 だから俺はなに食わぬ顔でパフェを食べ進めた。


 ……食べ進めてしまった。


「ねぇほら!大和と違って深谷くんはため息なんて吐かずに無言で食べてるんだよ!」


 荒げた声とともに、ピシッとこちらに指を差してくる。

 指についたクリームでも舐めてほしいのか?なんてことを思うが、どうせ違うだろうから見つめるだけで留めた。


「……これはまぁ、幼馴染の好というやつだよ。幼馴染だからこそ――いや、風華だからこそ、冗談を言い合えたり素の俺を見せれたりするんだよ」

「……っ!」


 先ほどまでの呆れ顔はどこへ行ったのやら。

 ほほ笑みを浮かべる王子様は綺羅野さんの手を握り……綺羅野さんは綺羅野さんで、満更でもなさそうに目を見開いては、わなわなと頬を赤らめ始める。


「そ、そう……だよね!私だからこそ見せれる素があるんだよね!も、もっとそういうのほしいな……とか言っちゃったり……?」

「もっと……?」


 懐疑的に目を細める王子様だけど、苦笑を浮かべてすぐに言葉を続けた。


「風華は優しいから素直な面を見せても絶対に怒らないよな。そういうところ、幼馴染として誇りに思う」

「ふへっ……。そ、そうかな……。わ、私優しいんだ……」

「うん優しい。この世の誰よりもね」

「ふへへっ……。ありがと……」


 これまた満更でもなさそうに頬を緩ませ、くねくねと体を捻っている。

 これが俗に言う『チョロイン』というやつなのだろう。


 いやまぁこんなイケメンに『この世の誰よりも優しい』なんて言われたら誰だって体を捻らすだろうけど、それでもこのマドンナは大袈裟過ぎる。


 この男もこの男だ。

 なんでこんなにアピールしてるのに気付かん。これが俗に言う『鈍感系主人公』なのか?


 甘ったるいイチャイチャをおかずにしながら、下の方にあるコンフレークを砕いて頬張る。

 さすれば、思い出したかのようにこちらに目を向けてくるイケメンくん。


「そういえば深谷さんも居たね」

「……どうぞ俺のことなんて気にせず楽しんでください」

「そんなことはしないよ。みんなで楽しむからこそ『遊び』っていうのが成り立つんだから」

「……では混じらせてもらいます……」


 太陽のように眩しい笑顔が顔面に突き刺さり、半強制的に口から言葉が溢れた。


 俺もこんなイケメンに生まれたら女性をたぶらかすことができたんだろうか?俺がもっとほほ笑みが上手かったら女性にチヤホヤされていたんだろうか!


 込み上げる妬みを胸に、すっかり俺へと視線を戻した王子様と目を合わせる。


「それで?2人ってどんな関係なの?」


 ほほ笑み顔から突然開かれたのはそんな言葉。

 未だに体を捻っている綺羅野さんは置いといて、ふやけたコンフレークを喉に通した俺は慎重に言う。


「俺と綺羅野さんはただの友達ですね」

「本当かい?単刀直入に聞くけど、お付き合いとかしてない?」

「してないですね」


 感情の読めないほほ笑みが未だに向けられ続ける。

 心拍数が上がったせいか、背中から垂れる冷や汗が気持ち悪い。


 でも俺はなんら間違ったことは口にしていない。

 付き合ってもなければ、綺羅野さんに好意なんて……まぁ、うん。ない。


 俺達はただ、隣の席になったから話していただけの仲。

 まぁその際に『深谷くんと話してて居心地が良い!友だちになろ!』と言われたわけなんだが……まぁそれ以上のことは断じてない。


 パフェを頬張ることもなく、ジッと瞳を見つめ返したのが功を奏したのだろう。

「そっか」と安堵のため息を零した王子様は、クルッとスプーンを回した。


「てっきりお付き合いしてるのかと思ったよ」

「さすがに不釣り合いが過ぎますよ。絶世の美少女と陰キャがお付き合いなんてした日には学校中から目の敵にされます」

「大袈裟だねぇ……」

「いやほんとそれぐらいの人ですからね。綺羅野さんは」


 苦笑を零すイケメンくんだが、正直そんな言葉を吐き捨てるのにも頷ける。


 綺羅野さんには女友達が多い。

 それこそ休み時間になればクラスの女子どころか、他クラスの女子までもを囲ってしまうほどに。


 けど、その中に男子は誰一人としていない。なんなら王子様以外の男子と話してるところを見たことがない。

 綺羅野さんの、数少ない男子の友達の中に俺がいる。それも、一緒にファミレスに来れるほどの仲。


 そんなのを見れば『付き合ってないの?』と疑問を抱くのも当然。


 柿を口に放り込む王子様を見つめながら、なんてことを考えていれば途端に視線が交差する。


「ん?どした?」

「……いえ、大和くんはどうなのかなぁ、と」

「オレ?オレはまぁ普通の幼馴染だけど」

「付き合ってたりとかしないんですか?」

「しないしない。風華にそういう感情はないよ」

「そっすか……」


 これは野暮なことを聞いてしまったのだろうか。

 ピタッと動きを止めた綺羅野さんは、すっかり顔色を戻して大和くんの後頭部を見つめている。


「ま、まぁとりあえず、今日の目的である『大和くんの察し能力底上げ大作戦』を実行しましょうよ」

「……ほんとにするのかい?」

「ほんとにします。そのために色々持ってきたんですから」


 綺羅野さんから視線を逸らした俺は、ゴソゴソとカバンに手を突っ込み……そして、一冊のノートを手に取った。


「『察しノート』……?安直な名前だね……」

「安直だからこそ分かりやすいんです!ってことで、説明しますね〜」


 ノートに続き、チェス盤を取り出した俺は容器を退けて机の上に広げた。

 そして、最低限の駒だけを並べながら言葉を続ける。


「まず、『察し』とはなにか。分かりますか?」

「はい!私分かります!」


 すっかり元気を取り戻した綺羅野さんの手が大きく上げられ、「どうぞ」と促してやれば意気揚々に言う。


「相手の行動を読み、なにを伝えたいかを颯爽に理解することです!そのためにも相手の行動をよく見てないといけません!」

「長々とありがとう。察しとはまぁ、『察すること』だな」

「そのまんまなんですか!?」

「ってのは冗談」


 最後のキングを置き終えた俺は、開いたノートを王子様の体の前へと持って行く。


「いま綺羅野さんが言った通りだし、ちょっと付け加えるとするのなら『既に分かっていることに基づいて推測すること』だな。そのノートにも書いてるだろう?」

「……いや?書いてないよ……?」


 ペラペラとページを捲り、くまなく探してくれているようだが、”無いのも当然”。


「だって書いてないもん」


 悠然とそんな言葉を吐き捨てた俺は、クイーンを一歩前進させた。


 チェス盤に乗せられている駒はそれぞれ『キング』『クイーン』『ビショップ』『ナイト』。


 そんな言葉と駒を見て疑問に思わないわけもなく、王子様は首を傾げる。

 そして俺は、綺羅野さんにも負けを劣らないほどの胸を張り上げた。


「まず!そのノートにはなにが書いてある!」

「あ、えーっと……『私の彼氏って生理の日に誘ってくるからホントやだ』……とかだな」

「そう!そのノートに書かれているのは、”姉貴の愚痴”だ!」


 俺には2人の姉と、1人の妹がいる。

 俺とは違って美人さんな姉貴はもちろんのこと、中学のマセガキの妹も彼氏を持っている。


 小学生の頃だ。

 姉貴に愚痴のはけ口に任命されたのは。


 当時高校生だった姉貴2人は、彼氏の嫌なところを俺に愚痴り、愚痴っては、愚痴りまくった。


 その時から俺は『将来的に俺も彼女作るんだろなぁ』って思い、姉貴たちの愚痴をノートに書き始め、女子と接するうえではそれに気をつけていた。

 結果がこの察し能力!別にお礼は言いたくはないが、一応手は拝んでおこう。


 ナイト以外の駒を前進させた俺はノートをピシッと指差し、


「簡単に言えば、その愚痴にさえ気をつけていれば察し能力は身につく」

「こ、これだけで……?」

「イェス。けどまぁ難しいだろうし、実際に難しかった」


 腕を組んだ俺は、首を傾げる王子様の瞳を見やる。


「チェスのルールは知ってる?」

「え、まぁ……多少は」

「なら話が早い」


 さらに首を傾げる王子様は未だに理解していないのだろう。

 なんなら綺羅野さんも首傾げてるけど……まぁいいや。


 悠然の表情を保ったまま、チェス盤に視線を落とす。


「チェスってその人の打ち方があるじゃん?」

「まぁあるな」

「それと一緒なんだよ。『あーこの人、次はこんな行動するだろうなぁ』ってのが分かってくるんだよね。そのノートを見て、女性のことを知っていったら察し能力が高まる!」

「「……?」」


 息のあった2人の頭にはクエスチョンマークが浮かび上がっていた。


 相変わらず傾げた首で仲良くノートを見やり、そしてチェス盤を見ては、もう一度ノートを見る。


「ごめんね?深谷くん。頼んだ私が言うのもなんだと思うけど、説明すっっっごく下手だね?」


 代表するように綺羅野さんが紡ぎ、隣のイケメンは申し訳無さそうな表情をしながらも縦に顔を振っていた。


「……分かりやすいと思うんだが……?」

「いやごめん。分かんない。特にチェス盤がわかんない」

「…………」


 なるほど。薄々気づいていたが、俺は説明が下手なんだな?


 妹に数学を教える時も『おにい説明下手』と罵られたし、姉貴に料理を教える時も『あんた説明下手だねぇ』と笑われた。


 家族間の冗談の類なのだろうと思っていたんだが……うん。認めよう。俺は説明が下手だ。


 表情を固まらせていた俺は、唇についた甘い液体を舌に乗せながら肩を竦めた。


「分かった。これはあれだ。感覚ってやつだ」

「投げやりすぎない!?」

「だってそうなんだもん。説明できん」


 目を見開く綺羅野さんだけど、これでダメなら俺からはどうすることもできない。

 苦笑を浮かべる王子様に目を向け、頭を下げた。


「ごめん大和くん。俺じゃ手助けできなさそうだ」

「あ、いや。大丈夫だよ。ありがとね?うん、ありがとう……」


 気まずそうな言葉を並べる王子様は、なんともまぁ分かりやすく目を泳がせている。


「いやでも、ほんとそのノート見てたら察し能力が身につくから。なんとなく乙女心分かってくるから」

「……なんとなく、ね……」

「いやまじで感覚なんだよこれ。『あぁこの子この言葉欲してるなぁ』『あぁあの子あれしてほしんだろうなぁ』ってのが分かるから」


 俺の言葉が曖昧すぎたから?それとも身振り手振りで説明する俺が滑稽だったから?

 小さく笑みを浮かべる2人は、お互いの顔を合わせて……そして俺を見た。


「ね?深谷くん面白いでしょ?」

「すっげー面白い。なんでオレ、深谷さんと話さなかったんだろ」


(……なんで好感度上がった……?)


 自分で言うのもなんだが、今の言動はマイナスポイントだったはず。

 笑みを浮かべる場面じゃないし、後悔する内容でもない。


 ひとりでに首を傾げていれば、途端に王子様から右手が突き出された。


「深谷さん。オレと友だちになってくれない?」

「……え、いきなりっすか……?」

「いきなりかな?こうして遊んでるじゃん」


 陰キャの俺からすればこの遊びすらもいきなりなんだけどな……!


 純粋無垢な笑顔に細い目を向けながらも、俺はその手を握り返した。


「…………分かりました。説明が下手な男ですが、よろしくお願いします……」

「よろしく〜」


 大きく手を上下に振るのは、綺羅野さんと友だちになったときのことを彷彿させる。

 この絶世の美女も、俺と友だちになる時はこの上なく腕を振って、周りからの視線をかっさらった。


 その際になんともまぁ分かりやすく妬みを向けられたものなのだが……今も同じ状況だ。


「あんな陰キャと友だちになるの……?」

「趣味悪……」

「全く面白くなさそう……」


 主に女性の声がひしひしと背中に突き刺さる。

 2人は気づいてないようだけど、女性の声に敏感な俺には嫌でも耳に入ってくる。


 まぁ良いんだけどさ。こんなイケメンとこんな美女と関わるんだからそれぐらいの妬みを覚悟してるし、なんとも思わないけどさ。


 俺から友だちになったわけじゃないからな?『変な手使っただろ!』って責め立てるんじゃないぞ?


「ん?どしたの深谷くん」


 表情が強張っていたのだろうか。

 首を傾げるイケメンくんの顔が視界に映り込み、慌てて身を仰け反らせた。


「なんもないっす!大和くんと友達になれて光栄っす!」

「だったらいいんだけどねぇ」


 未だに振られる手に苦笑を浮かべていれば、続けざまに王子様が口を開いた。


「あっ、察し能力のことなんだけど」

「……はい」


 黒歴史にもなりうることを掘り返され、分かりやすく声を潜める俺なのだが……お構いなしに笑みを浮かべた。


「これから教えてくれない?女性と話す都度に教える感じでさ」

「それは別にいいんすけど……そもそも俺に察し能力があると信じてるんすか?」

「信じるもなにも、風華が認めてる人なんだよ?あるに決まってるじゃん」

「……ありがとうございます」


 流石は幼馴染というべきか、信用度が凄まじく高い。

 熱くなる顔を逸らし、パフェに目を向けた俺は――


「……もう1個注文していいっすか?」


 瞬間、2人して含み笑いを浮かべた。


「な、なんですか?俺なにかしましたか?」


 美男美女が目の前にいるからだろう。

 いつの間にか染み付いている敬語で言葉を返せば、顔の前で小さく手を振った王子様が笑いを堪えながら紡ぐ。


「いや大丈夫……だよ。頼んじゃっていいんだよ……」

「……なら遠慮なく頼みますけど……」


 訝しむ目を浮かべながらタッチパネルを手に取る。

 そうすれば、「甘いもの好きなんだね」だとか「私も初耳だよ」だとかの笑い声に混じったコショコショ話が聞こえてくる。


(……甘いものが好きで悪いかよ……)


 心のなかで不磨を漏らしながらも、特大ビック大盛りパフェをカートに入れた。

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