(自称)察し能力検定特段の持ち主である俺が、学園のマドンナと仲良くなった結果……「私!あなたじゃないとダメな体になっちゃったの!」と言われました。ごめん!俺もあなたじゃないと付き合えないの!

せにな

第1話 学園のマドンナは(自称)察し能力検定特段の俺じゃないとダメな体になったらしい

「私!深谷ふかやくんじゃないとダメな体になっちゃったの!」


 突然告げるのは、これまた美人な少女。


 何色にも染まらない白銀の髪の毛は腰まで伸び、丁寧に手入れされているのだろう。一本一本が絹のように輝いており、誰の目も引いてしまう美しさ。


 小さな顔に浮かぶのはスッと通った鼻筋。くっきりとした二重。整った眉毛。長いまつ毛。真っ赤な唇。

 その全てが女優顔負けのくせに、真っ白だったはずの頬は若干赤く染まっている。


 この少女もとい、綺羅野きらの風華ふうかさんは1万年に1人の美少女と表現しても、誰の文句も付けようがない美貌を持っており、それに加えて才色兼備。文武両道。品行方正。


 きっと、綺羅野さんに視線が集まるのはそれだけじゃない。

 見てみろ?このおっぱいを。まじでデッカイ。いつ見てもデッカイ!


 推定Gカップのおっぱいを目尻に置きながら、同じ視線の高さにいる彼女にほほ笑み顔を浮かべる。


「いきなりだな?彼氏でもできたんすか?」

「そう!そうなんだよ!!できた……というより!”できそうなの”!!!」


 帰りのHRも終わり、人のいなくなった教室。

 静寂を切り裂くようにドンッと机を叩く。


「なのに!なんで!?なんでの!?」


「うぅ……」と唸る綺羅野さんは机に突っ伏し、手でも繋ぎたいのか?と言わんばかりに腕を伸ばしてくる。


 高校2年生の秋。どうやら、この学園のマドンナには良い感じの男が居たらしい。

 この学校にその噂が流れたらとんでもないことになりそうなんだが、その辺りは綺羅野マドンナさんも弁えているだろう。


 まぁ弁えてても、(自称)察し能力検定特段を取った俺ともなれば、その相手というのも大体の予想がつく。


 チラッと窓の外を見やる。

 そうすれば、金色の髪をセンターパートにパーマを当てた、これまたイケメンくんの姿が視界に入る。


 国外の俳優も顔負けなほどの鼻の高さと目の大きさ。そのくせ唇は小さく、顔も小さい。

 アンバランスだろ!とツッコミたい気持ちも山々なのだが、あれで顔が整っているのだから鼻の高さは偉大なんだと思う。


 身長も173センチの俺よりも遥かに高い、189センチ。

 その身長のお陰でか、高校1年ながらもバレー部のエースに選ばれ、高2の今ではキャプテンを任されてるほど。

 そして、この高校を何度も上位に導いているやつだ。


 あいつもまた、才色兼備。文武両道。品行方正なのだ。

 女生徒からは『王子様』と呼ばれ、男子生徒からは『女クラッシャー』というあだ名が付けられている。


 だってこのマドンナのかっっったい恋心を砕いたんだぜ?そのあだ名にも納得がいく。


 頬杖を付き、おもむろに鼻から息を吐き捨てる。


「俺よりもよっぽど大和やまとくんの方が良いと思うけどな」

「……っ!?なんで!?なんで分かるの!?」

「綺羅野さんのこれまでの行動からなんとなく」

「もう……!そんなのだから私は深谷くんじゃないとダメな体になったの!!」


 シワを寄せた顔で睨みつけてくるが、俺はいつも通り生活していただけ。


 ただまぁ、1個。1個だけ、このマドンナと接するうえで気をつけていたことがある。

 それは、『察してあげること』というなんとも簡単なもの。


 まぁマドンナに限った話じゃない。

 俺は女性と話すうえで、絶対に察知能力を高めて話している。


 理由としては……姉貴たちに彼氏のあれよこれよの愚痴を聞かされたからそうなってしまったんだが……。


「圧倒的高スペックな男子よりも俺の方が良いと?」

「そう!居心地の良さが段違いなの!絶対に私のためになるのは大和なのに、居心地の良さが恋しくなっちゃうの!!」

「……それは認めるんだ」

「当たり前じゃん!だって深谷くんだよ?察する以外なにもできなくない?」

「……」


 逃げるようにふいっと顔を逸らした。


 実際、俺は察知能力に長けているだけで、勉強もできなければ運動もできないミジンコ。

 家族が多いというのに家事はできず、唯一できる料理も綺羅野さん以下。


 王子様のようなイケメンな顔面も持ち合わせていないし、称えられるようなことを残したこともない。


 ……なにが言いたいのかというと、俺とこのマドンナは不釣り合いということ。


『深谷くんじゃないとダメ!』と言われても困るのは俺。

 俺は普通に接してただけだし、学園のマドンナを虜にするようなイベントなんて起こしていない。


「……まぁ、うん。王子様とお付き合いできるように頑張れ……」


 窓の外に向かって投げやり気味に言葉を吐き捨てる。

 そうすれば、唇を尖らせた綺羅野さんも窓の外に目を向け、正門を出ていく王子様を見下ろす。


「私だって頑張ってるもん……。付き合えるようにいっぱい頑張ってるもん……!」

「知ってる。朝早くにお弁当作って来たり、『一緒に帰ろ』って誘ってみたり、ボディータッチを増やしてみたり。綺羅野さんなりに色々頑張ってるのは知ってる」

「それだよ……!なんで隠してることを全部見破るの!!」


 ピシッと鼻の頂上を目掛けて指差してくるのだが……俺とてそれなりの洞察力はある。

 なに食わぬ顔を浮かべながら、より目で差された指の先を見やる。


「絆創膏貼ってるから一瞬でわかるんだよね。あとたまに青色の弁当袋持ってきてるし」

「弁当袋は隠した状態で持ってきてます!」


 そそくさと人差し指を隠し、赤くした顔で声を張り上げる。


 俺と綺羅野さんの席は隣。

 昼休みになり、王子様の教室に行く際に弁当箱を取り出すのも必然で、その際に垣間見えるのも当然。


 本人は隠しているようだが、結構見えるもんだぞ?


 苦笑を披露する俺はおもむろに腕組を披露し、小さく口を開いた。


「んで?俺になにをしてほしいと?」


 こうして俺をこの教室に留めているわけだ。

 こんな変な言いがかりをされるために残されたわけでもなさそうだし。


 なんてことを考えていると、不意にジトッとした湿った瞳が向けられた。


「……深谷くんにはひとつのお願いを提示したいんです」

「と言いますと?」


 不服気に尖らせた唇が釣り上がり、『問い質したが運の尽き!』と言いたげにピシッと絆創膏が貼ってある指で顔を突き刺した。


「大和の察知能力を鍛えてほしいんです!!あんの鈍感野郎に!察し能力とはどんなものかを知らしめてほしいんです!!!」

「あぁ〜そゆこと?」


 策中にハマったとは思わない。

 なんなら、その提案が”嬉しい”と思ってしまうほど。


 綺羅野さんを真似るように頬を吊り上げた俺は、右手を差し出す。


「察し能力検定特段の持ち主である俺に頼るのは懸命な判断だ。よかろう!王子様と名高い大和くんに察しとはなんたるかを教えてやる!」

「……察し能力検定なんてあるの……?」

「ない。『自称』察し能力検定特段だ。言わせんな」

「…………もしかして頼る人間違えた?」


 なんて言葉を零しながらも、俺以外に頼る人が居ないのだろう。

 懐疑的な瞳を浮かべる綺羅野さんは、そっと俺の右手と握手をした。

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