第13話 共同作業
翌朝、シチューを温めて、おたまで皿に盛りスプーンで食べた。
カピウサの脂やスパイスが野菜に染みてマジで美味い。
こんな文化的な食事をしたら、牛のように水菜をムシャムシャする生活には戻れない……。
カピウサを10頭捕まえる方法を考えないとな。達成できればウルファが食事を提供してくれる。
それにカピウサを狩りまくるのは俺にとってメリットでしかない。
今まで死体廃棄の問題があって食べる分しか捕れなかった。
それに食べもしないのに殺すのは良心が痛む。
しかし売れるとなれば話は別だ。どんどん狩って魂を吸収すれば俺は強くなる。
今まで3日に1頭だったのが毎日10頭になるのだ。一ヶ月も続ければ物凄くステータスアップするだろう。何としてもやりたい。
食後、外に出てビー玉サイズの小石を拾う。
それを親指の腹に乗せて、人差し指の爪で弾いて飛ばす。
石は放物線を描き3メートル先の草むらに落ちた。
同じ動作をもう一度やる。
次は弾く瞬間に――、【衝撃波】!
パンッ! ヒューーーン
石を弾く瞬間、【衝撃波】を使うと銃弾のように飛んだ。
この【衝撃波】で地面を蹴って加速する場合、俺の体重を弾き飛ばすから魔力消費が激しく2歩で魔力切れになる。
しかし、指で石を弾く程度なら魔力消費は少ない。
15発から20発は撃てそうだ……、けど。
俺は10メートル先の木を狙って小石を撃つ。
パンッ! ヒューーーン!
当たらない。予想はしていた。
石の形状が歪だから、指で弾いても真っ直ぐ射出しないんだよな。それに石の形状のせいで空気抵抗で曲がるし減速も激しい。これじゃ仮に当たってもカピウサの分厚い毛皮を貫通できない。
有効射程距離は3メートルくらいか?
使い物にならんな。
砲身と弾丸があれば銃のように撃てると思うんだけど……。そんなの無い。
弓を作ってみるか?
うーん、カピウサは耳が良いから音速で飛ばさないと、矢の風切り音で逃げるよな……。
大きな箱を作るにしても材料や工具がない。片腕だからまともな作業もできない。
「ウルファ……今日も来るのかな」
そう呟くと森の方から足音が聞こえた。ウルファだ。
時刻は日本で例えると朝の六時くらい。随分早く来たな。実は滅茶苦茶やる気あるんじゃないか?
彼女は俺を見付けると手を振る。俺も手を振って応えた。
◇
今日も大きな籠を背負っている。
中には野菜の他にナタやノコギリ、藁を編んだ紐が入っている。
それと――。
ウルファはボロ雑巾のような服を籠から取り出した。それを俺の体に当ててサイズを確認する。
因みに彼女もボロ雑巾を繋ぎ合わせたような服を着ている。
彼女が持ってきたのはシャツとズボン。俺に丁度いいようだ。
その服を「ん」っと差し出してきた。
着ていいんだよな!?
服を受け取り片手で不器用に着ようとするが上手く着れない。すると俺から服を奪い取り、広げて着せてくれた。
前のボタンもとめてくれる。
「ラタッカヨ、ネテキ」
何言ってるかわからないけど、これはマジで有り難い。夜は少し冷えるし、昼間は日差しが強いから日焼けが酷い。なにより一枚着るだけで安心感が……!
「ありがとう!」
「アリ…ガ……トウ!」
◇
ウルファに手招きされて森へ向かった。彼女はノコギリとナタを持っている。
訪れたのは黒い竹が生えているエリアだ。この辺りはこの黒竹が鬱蒼としているからあまり来ない。
彼女はその竹をノコギリで切り始めた。簡単に切れるようですぐに一本切ってしまった。
俺にノコギリを渡して竹藪を指差す。
これで切れってことか。
服をもらって胃袋まで握られているからごねたりはしない。
俺は素直に頷いて作業に取り掛かった。
左手しかない俺でもノコギリで切るのは簡単だった。
よし、頑張ろう!
俺は次々に竹を切っていく。
ウルファは俺が切った竹を草原に運び、ナタで枝を落としている。
俺は切るだけだから、こっちの方が進捗が速くて、途中から彼女の作業を一緒にやった。
ジェスチャーや相手の動きを観察して自分が今何をするべきか考える。
言葉が通じなくても作業は順調に進んだ。
◇
俺は巨木に釘で打ち付けた竹割り器で、竹を縦割り4等分に割いていく。
ウルファは割いた竹で何かを作っている。
俺は割った竹を搬入しながら彼女の作業を観察した。慣れた手つきで物凄い速さで竹を編んでいる。
これって。
超巨大な籠を作ってるんだ。
これでカピウサを捕まえるってことか。
昨日、俺が絵を描いたから……。
しかし、手際の良い動きだ。この子職人だよ。
農民を百の姓と書いて百姓と言うが、この子、何でも出来て器用だな……。
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