因縁生起 離婚女とゲイカップル

鉄馬桃花

第1話 真夜中の出会い

宝来聖夜ほうらいせいやは、むしゃくしゃしていた。


きりりとした眉と、鋭さのある切れ長の目が

風を切りながら走る鉄馬バイクからの風圧で

余計にゆがむ。


幸か不幸か、仕事が一段落してしまっていた上での連休中。


日頃の仕事での疲れを癒すべく、

取った宿屋の受付時間は、とうに過ぎ

年の離れたBFだけを、

待たせてしまう事となっていた。


いっそ、全てを放り出し、

次の仕事に掛かるべく、会社に向かいたくなる衝動もあったが

3か月ぶりの、ゆっくりとした逢瀬おうせの時を待つ

小林悠こばやしゆうにも、顔が立たなくなる。


「待ってるから・・・」

遅れる事を連絡した時の

ゆうの悲しそうな声が、脳裏に響いた気がした。


「今日はもう、そちらに着かないかもだから、

先に、ゆっくりと休んでいてくれ。」

そう言ってあったのは救いだ。


家での いつもの両親との衝突との苛立ちと、

色々な苛立ちが、次々と胸に沸き上がり、

愛機あいきに縋りつくように、

夜の高速道路を走らせている。


「事故ったらヤバいな・・・」


暗闇から明るいトンネルへと入った時、

いつもよりも目の慣れが遅い事に気づいた。


次々と通り過ぎていくオレンジの道路照明の

先の暗闇が、ぽっかりと口を開け

自分を飲み込んでしまうような気さえする。


「次のサービスエリアで、少し休むか」


愛機のお陰か?冷静さが、少し戻った様だった。


連休と言っても、自営である聖夜は

世間での連休とは違い、

仕事の区切りが良い時にしか連休は取らない。


ガラ空きのSAのバイク置き場に愛機を休ませ、

目前の自動販売機から、いつもの缶コーヒーを買う。


「は~、生きかえるぅ~」

愛機のそばに戻り、ゆっくりと味わう。


聖夜は、この瞬間が好きだ。


何かに満たされた感じがするからだ。


「予定は狂ったけど、狂ったからこその静寂だな」


愛機のエンジンが外気に冷やされ

キンと音を立てた。


それがまた、聖夜にとっては

自分に何かを求めている訳ではない物からの

優しい答えに聞こえるのだった。


「ん?」

「こんな夜中に俺以外のライダーがいるのか?」


遠くから車とは違う、単車のエンジンの音がする。


「へ?」

バイク専用駐車場に近づく、エンジン音と共に

明らかに何かが違う、ライダーの姿も、近づいて来ていた。






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