第9話
「り、リモさぁん、助けて!」
ペンダントを使った後、私は、急いでリモさんの店に駆け込んでいた。
幸い、お客さんは誰もおらず、私に気づいたリモさんがかけよってきた。
「……!ソフィア、どうしたんだい?」
「あ、あのね、ペンダントを使ったんだけど……そうしたら……」
ああ、走ってきたせいで息が荒くて話が続かない。
早く、早く言わないとあの二人が来ちゃうのに……!
バン!、と扉が開く。
「あっ!」
お、遅かった……!
私を追ってきていたクリスとラピスが入ってきた。
二人は店内を見回して、同じところで視線を止める。
リモさんが私に渡したのと同じ妊娠薬が置いてあるところだ。
「……ソフィアにこれを渡したのは君かな」
クリスが妊娠薬の瓶を見せながら尋ねる。
「そうだけど……?」
警戒心を滲ませながら、リモさんが答えた。
「そうか…………」
クリスがゆっくりとリモさんに歩み寄る。
いつのまにか私を守るように二人との間にリモさんが立っていた。
クリスがリモさんの前に辿り着く。
そうして、リモさんの警戒心がピークに達した時……、
「ありがとう。君のおかげだ」
クリスがリモさんに頭を下げた。
「……はい?」
……初めて見たかも。リモさんのこんなびっくりしてる顔。
「礼として、そうだな。同じものを一ダースほど買おう」
「ん、私は、二ダース欲しい」
と、ラピス。
「……む」
「……ん」
二人は睨み合って。
「…………三ダース」
「四」
「五」
「六」
「なな……」
「ちょ、ちょっと!二人ともいい加減にしてよ!そんなにあったって意味ないでしょ!?」
聞いていられず、思わずツッコミをしてしまう。
いや、そもそも要らないから、突っ込むところは
「だがソフィア、妊娠薬は絶対じゃない。私との子を確実に作るには数が必要だろう?」
「ん、そう。それに……私、ソフィアとの子なら沢山欲しいし……」
リモさんの前なのに、恥ずかしげもなくそんなことを言う二人。
……うぅ、私が恥ずかしいよ……。
「…………ねえ、ソフィア。これ、どういうことだい……?」
と、疲れた顔のリモさんに、私は、二人に聞こえないよう、こっそりと何があったかを説明した。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「って、言うわけなの」
私の説明を聞き終わったリモさんは、困惑した顔をしていた。
「……君も知る通り、このペンダントは僕が作ったものだ。どんな風に作動して、どんな効果が出るのか、万一、不具合が起きたとして、どんなものが考えられるのか。しっかりと把握しているけれど……、こんなのは想定外だ」
「…………二人を元に戻せる……?」
「…………うーん。面倒なことになったね。単なる傷薬と違って、基本的に精神に作用する薬は、機序を把握してそれ用に調合しないと効かないんだ。つまり、二人を戻すには魔道具がどう働いたのかを先に調べる必要がある」
「……え、えっと、具体的にどうしたら……?」
「そうだね、とりあえず……」
と、リモさんが言いかけた時だった。
「……ん、ソフィア、なんの話をしてるの?」
ラピスが突然割り込んできた。
「その、邪魔したいわけじゃなくて、相談事があるなら、私も、力になれるかもって」
上目遣いで私を見るラピス。
う、か、可愛い。
「……えっと……」
「ソフィア、ちょっと待って」
リモさんが私の耳元で囁く。
「いいかい?絶対に魔道具のことは話しちゃだめだよ」
「え?」
「魔道具で精神が操作されている、なんて言ったら余計な混乱を招くだけだからね。最悪の場合、自分の今の気持ちは本物なのか、とかそんなことを考えすぎて精神崩壊するってことも考えられる。とにかく少なくとも、僕がいい、と言うまでは黙っておくんだ」
せ、せせ、精神崩壊……!?
あまりに物騒すぎるワードに開きかけていた口を閉じる。
「……ソフィア…………?」
私の挙動があまりにも不自然だったせいで、ラピスが不審がっている。
そんなラピスに、クリスがやれやれ、と呆れた風な口調で、
「全くラピス、君は余裕がないな。本音は邪魔をしたいだけのくせに、言い訳をしてまで割り込んで。ソフィア、私なら君の交友関係を縛ったりなんてしないよ」
「……ん、その割にはさっきから右手が剣にかかってるけど」
「……む」
「……ん」
再び、二人の間で火花が散る。
な、なんでこんなに喧嘩腰なんだ……、勘弁して……。
と、その隙をついて、リモさんが私に耳打ちをした。
「とりあえず、ペンダントを渡してくれるかな。異常がないか調べてみる。君は二人といて、何か気づいたことがあれば報告しにきてくれ」
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