第8話
「…………」
ど、どうなったのかな……?
二人は何も言わないし、効いたのかも分からない。
ていうか、こんな風にベッドに押し倒したままにしていたら、せっかく好感度上げても気持ち悪がられてすぐに下がっちゃうんじゃ……?
「ご、ごめんね……?」
嫌な考えに、私はすぐに体を起こして二人から離れた。
表情を見ると、二人とも、理解が追いついてなくてフリーズしているような、そんな顔をしていた。
嫌がってる様子は感じられないけど……。
な、なんだろうこの反応は……。
「あー、えっと……二人とも……?」
困惑していると、すっと二人が起き上がって、同時に言った。
「「ソフィアぁ……」」
え。
その声は、まるで愛しくして仕方のない相手を呼ぶ時のように甘く、目はハートが浮かんでるような気さえするくらい、とろとろにとろけていて。
間もなく今度は私が反対に二人に押し倒された。
右耳からは、クリスのかっこいい声が、
「ソフィア、好きだ。愛している」
左耳からは、幼く聞こえるラピスの声が、
「ソフィア、好き、大好き」
二人とも狂ったように私に愛の言葉を囁き続けている。
な、なに……?この状況は……?
「ちょ、ちょっと待って!い、一旦、ちょっと離して……」
私の言葉に、二人が絶望したような顔を浮かべる。
なんだか罪悪感がして思わず、
「ち、違うよ?嫌とかじゃなくて、そ、その二人の気持ちはとっても嬉しいし、私も二人のこと大好きだけど……」
咄嗟にそんな弁解をしてしまう。
二人は、
『好き……ソフィアが私のこと……』
とか、嬉しそうにつぶやいて笑っている。
ど、どうしよう……、な、なんなんだこの状況は……?
り、リモさんは確か、『そんなに効果はない』とか、『嫌われない程度までにしか上がらない』って、言ってたよね……?
どう見ても二人の様子はそんな風には思えない。もう私のことを好きで好きでたまらない、みたいな……。
……ペンダントがうまく効きすぎちゃったのかな……??
頭の中が疑問でいっぱいになる。
混乱していると、ラピスが不意に言った。
「ソフィア、私、ソフィアの期待に沿えるように、頑張るね」
……期待?なんの話……?
と思ってラピスを見ていると、なんとラピスが妊娠薬を取り出して、口に入れようとして……!
「ら、ラピスちょっと待て!」
驚きのあまり固まっている私の代わりに、クリスが薬を奪ってそれを阻止する。
よ、よかった……、と安心したのも束の間、
「ソフィア。初めはラピスじゃなく、私に任せてくれ。こんなやつより、私の方が確実に君を失望させない」
と言って、今度はクリスがその薬を飲もうとする。
だけど、それをラピスが阻止して。
二人は、
『……ん』『……む』
と睨み合うと、わあわあギャアギャア、薬を巡って戦いを始めた。
ラピスが魔法の光線を放ち、クリスがそれをどこからともなく取り出した剣で防いで反撃して、とガチなやつだ。心なしか二人とも、二日前の魔王との戦いの時以上に真剣になっている気さえする。
計算しているのか私の方には全く飛んでこないけど、壁や家具が戦いの余波でダメージを受けていた。
こ、このままじゃ家が壊れるんじゃ……!?
「ちょ、ちょっと待って!け、喧嘩はダメだよ!」
二人は私の言葉でピタリと戦いを止めた。
そして代わりに今度は、アピールを始める。
「……私はクリスと違って魔法が使えるから、ソフィアのことをもっと楽しませられると思う」
「……確かに私は魔法は使えないが、ラピスより体は成熟しているし、体力だって上だ。ラピスよりも君に素晴らしい体験をさせてあげられると保証する」
じっと私を熱っぽい目で見つめる二人。
た、確かに冷たい目で見られるのが嫌だって思ったけど……こ、これはこれで……困る!!
「わ、私その……あの……」
と、とりあえず……そうだ、リモさんに相談しにいこう!
「よ、用事を思い出して……!ごめんね!すぐに帰るから!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます