第7話
やることは簡単だ。
自分の中で繰り返し、手順を確認する。
ペンダントを使って、二人の私を嫌う気持ちをなくす。
二人がパーティの離脱を許してくれないのは多分、私への復讐のためだろうから、ペンダントを使った後なら、辞めさせてくれるはずだ。
その後どうするかはまだ決めてないけど……、二人に嫌われている今よりは、ずっとマシなはずだ。
……うん、よし大丈夫。
自分の部屋を出て、ラピスの部屋の前に立つと、ドア越しに二人の声が聞こえた。
ドアのせいで何を言っているかは分からない。
二人は昨夜も共に過ごしたのだろうか?
とにかく、普通にハグしようとしても避けられるだけだ。なんとか不意をつく形にしないと。
場合によってはリモさんから貰った睡眠薬が使えるかもしれないし……。
そんなことを思いつつ、扉を静かに少しだけ開けて中の様子を伺う。
二人はベッドの上に座り、真剣な雰囲気で何かを話し合っているように見えた。
なんだろう?仕事のこととか話しているのかな?
集中して聞き耳を立ててみると、クリスの声が聞こえた。
「…………ソフィアが…………」
……え?
「わ、私?」
あっ!びっくりして思わず口に出しちゃった!
それほど大きい声ではなかったけれど、案の定二人が私に気づいてしまった。
か、完全にやってしまった……。
「…………ソフィア。話、聞いてた?」
ラピスが、二人の間に置いてあった何かを素早く隠しながら尋ねた。
よくは見えなかったけれど……あれは大きさからして……、
昨日の妊娠薬、だよね?
もしかして二人とも、私が妊娠薬を持っていたことについて話していたの?
そう思った時、私にある考えが閃いた。
……二人がどうしてそんなに気にしているのかはわからないけど……、もしかしたら、これ……、利用できるかもしれない。
妊娠薬の話で気を逸らせば、あるいは……!
「あのね、二人とも」
その思いつきに至ったと同時に、私は話し始めていた。
二人に警戒されないようにゆっくりと距離をつめながら。
「私、大事な話があってきたの。……昨日の、妊娠薬のことなんだけど」
妊娠薬、という単語が出た時、二人がぴくりと反応したのが分かった。
やっぱり、二人は妊娠薬のことを気にしているらしい。
「……昨日は、友達が冗談でくれたって言ったけど……あれはね、嘘なの」
ああ、緊張して頭が真っ白になってきた。
うまく話せているだろうか?
殆ど出まかせで言っているから正直なところ自信がない。
「冗談でもらったんじゃなくて……、私が使うために、お願いして貰ったの」
重大なことを打ち明ける時のようにゆっくりと、でも不自然にならない速度で話す。
そのおかげで、遅いスピードでもベッドの上までたどり着くことができた。
まだだ、あと少し……!
「そ、それって……誰と……?」
ラピスが私に恐る恐る尋ねた。
だ、誰と……??
そ、そうだよね、ここまで話したら、そういう話の流れになるよね……?
ど、どうしよう……。
ここにきて、見切り発車で話してきたツケが……!
いや……、もう、後戻りはできない!
幸い、二人は私の言葉に集中しきっている。
ここで決めるしかない!
「それは……相手は……」
焦らすように言うと、二人は一瞬、わずかに体を硬直させてーー、
ーーいまだ!
私はベッドを足で蹴り、手を広げ、タックルするみたいに二人に飛びついた!
押し倒した形になりながら、私は左にラピス、右にクリスを押さえ込むことができた。
素早く二人の背中に手を回してハグの形にする。
「「そ、ソフィア……!?」」
困惑する二人の隙をついて、私は目を閉じて念じた。
……二人とも ……ごめん……!
胸にかけたペンダントが淡くピンクの光を放つ。
恐らく、魔道具が作動している証だろう。
これで、二人は私のことを……!
……だけど、まさかあんなことになるなんて、この時は想像もしていなかった。
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