第二話 異世界の景色に大感動!

「なんじゃこりゃ〜!でっか!何これ?ひまわり??」


 一見すると向日葵なのだが大きさが半端ない。ラフレシアかよ!この大きさからひまわりの種ができたら、僕の顔くらいの大きさになってしまうのではないだろうか?


 !?

「なんか今横切らなかった?えっ!動物?うさぎ?ヤッバ!野兎とか初めて見た!」


 まだ草がガサガサ動いている?他にも動物がいるのだろうか? 


「うっわーっ!すっげ〜でっかい木!!」


 これは、、縄文杉とかなのかな??


「お前は三歳児か?あんな木どこにでもあんだろ」


 え?そうなの?


 お疲れのレオン様、エミリア様の代わりに手綱を引くことになった僕なのだが、見るもの見るもの全てが新鮮なので声を上げ続けていたら、馬のパトリシアじゃなかったパトリシア様が呆れた声を上げた。


 いや、仕方ないでしょ。僕にとっては初めて見る世界なんだから。


「レオン様もエミリア様もお疲れになって休んでるんだから邪魔すんじゃねーよ」


 まあそれは確かにそうかも。


 このパーティーはモンスター討伐の帰りなんだそうだ。近くの森に巣食ってしまったモンスタービーを討伐してきたらしい。


 モンスタービーとは蜂の魔人のようなものだ。蜂の能力を持った魔人が領地間の交流の妨げとなってしまっているので、領主様の嫡男、レオン様を中心とした討伐隊が結成されたというわけだ。


 レオン様はこの領地で一番の使い手とのことだ。顔も綺麗だしスタイルもいいし、性格もいいしその上お強いとは非の打ち所がないお方ではないか。


 僕が好きになってしまうのも当然のことだろう。ちなみに元いた世界では同性愛の気は微塵もなかった。


 レオン様が聖人君子過ぎるのが悪いんだと思う。たぶん、、。


 モンスタービー討伐は無事に成功したのだがその帰路、精魂使い果たしてしまっている状態のところをモンスターベアーの集団に出くわしてしまい大ピンチになってしまったのだとか。


 モンスタービー討伐の際は一人も犠牲者は出なかったらしいのだが、モンスターベアーとの戦いで数十名いた兵士を一瞬で失い、今いるメンバーだけになってしまったらしい。


 もう終わったと思った瞬間、僕が飛び込んできてモンスターベアーの集団を火炎魔法を使って一網打尽にしてしまったらしいのだが、そこのところの記憶は僕には全くないので真相は定かではない。


 状況が状況だけにエミリア様の気が立ってしまっていたのも致し方のないことなのだろう。


「うわっ!綺麗な湖〜!」


 やばっ!また声が出てしまった!

 パトリシア様は呆れたようにため息をついてしまっていた。


 いや、仕方ないでしょ。何といっても湖の透明度が半端ないんだから。やっぱこっちの世界では水質汚染なんて言葉は存在しないんだろうな。水中の魚がまるで中に浮いているように見えるほどの透明度を誇っている。


 そして湖面は夕日を浴びてオレンジ色に輝いていた。さざ波が起きるたびにオレンジ色の波紋が広がって行く。


 マジ〜!ここ本当に異世界?天国じゃないの??


 えーっ!これは綺麗すぎるでしょ!こんな絶景もこっちでは当たり前で見惚れる価値もないっていうの?


 どんだけ幻想的な世界なんだよ!


 馬より序列が下になってしまっていてヘコんでいたけど、そんなのどうでも良いと思えるほどの景色が広がっていた。


 綺麗だな〜!


「えっ!えっ!パトリシア様、こんな綺麗な景色レオン様、エミリア様に見せなくていいの?目の前に大きな宝石があってそれを揺り動かして眺めているような絶景なんですけど!?」


「パトリシア少し止めてくれないか?」


 僕が興奮気味に声を上げていたので、馬車内で休んでいたはずのレオン様が出てきてそう声を掛けて僕の隣に腰をかけた。


 ひゃーっ!何この状況!ロマンチックすぎるんですけど〜っ!

 こんな絶景を見ながらレオン様と語り合えるなんて〜!!

 もう死んでも良いです。女神様、僕の役目は終わりでいいですか?


 この雰囲気を利用してレオン様の肩に首乗せたりしても良いかな?

 怒られるかな?


 てか、僕はいつからこんな思考を持つようになったのだろうか?

 女性の神様に能力をもらったので、女性のような思考を持つようになってしまったのだろうか?


「伊藤殿は純粋なお心をお持ちなんですね。私は今までそんな気持ちでこの湖を見たことはなかったです。確かに宝石のような輝きだ」


 輝いているあなたの瞳の方が宝石みたいです。

 伊藤殿なんて呼ばないで良太って呼んでください。


「レオン様、ほら、雲も黄金色に染まってますよ。まばらにある雲がさながら黄金が空に散りばめられているように輝いて見えませんか?」


「おおっ!本当に伊藤殿は綺麗な表現で自然を表すな!」


 レオン様は僕の表現に感激したのか瞳を潤ませていた。

 感極まっているのかな?

 ちょっと待って、マジで良い雰囲気なんじゃないのこれ?


「エミリア、お前も来てみなさい」


 えーっ!?あんなアバズレ女呼ばなくていいのに。


 レオン様はさっき僕が言ったことと同じことをエミリア様に言っていた。

 エミリア様の瞳も潤み始めてくる、、感動しているのだろうか?

 そして瞳が夕日に照らされオレンジの色味を帯び輝き出してきた。


 なんてお美しさか!!

 目の前に広がる景色よりこっちの方が綺麗かも!


 この勢いを借りてチューとかしちゃったら、エミリア様と良い感じの関係になったりしないかな?

 まあないか、張り倒されて終わりだな。きっと。


 美男美女に挟まれてこの景色を見れるなんて、もう十分幸せ者じゃん!

 高望みはよしておこう。


「伊藤殿ありがとう。兵を死なせてしまい、どのツラ下げて街に戻ったら良いのかと思い悩んでいたが、この領地を守るためにも私は強くあらなければならない。そういうことだな?」


 えっ!いやー、そんなつもりは全くなかったんだけど、もしかして僕がレオン様を励ました事になってる?


「何だお前?だからわざとらしく明るく振る舞っていたのか?」


 いや、パトリシア様、そんなこと全くないんですよ。でもなんかその方が良さそうだから便乗してそういう事にしておこう。


 なんか知らないけどレオン様を励ますことができたし、綺麗な景色も見れたしこの世界でもちょっとだけやっていけそうな気がしてきた。

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