無敵モードが発動されたら本当に無敵になるのですが、腹黒でド変態のためか発動出来ないようにされてしまいました。

加藤 佑一

第一章 いきなり始まった異世界生活

第一話 僕の序列は一番下

「ちょっと、あなた!火炎魔法使って見せなさいよ!」


 この領地のご令嬢、エミリア様は僕の前に仁王立ちになると、そう言って腕組みしながら睨みつけてきた。


 こ、怖いんですけど、、。

 いきなりそんなこと言われてもなあ、、魔法なんて使ったことないんですけど、、。


 ものすごい剣幕で凄まれてしまったので、無下に断ることもできず見様見真似で取り敢えずやってみることに。


 両手を胸の前にかざし、力を込め集中し前へと突き出してみた。


「はぁー、ファイヤー!」


 ボッ!!


「おお、凄い!なんか出た!」


「おお、凄いじゃないわヨォーッ!マッチくらいのチンケな炎しか上がってないじゃないのーッ!私を助けたときに使った烈火の如く立ち上がった火炎魔法は何だったのヨォーッ!!」


 ひゃ〜!そんな大きな声出さないで〜!


 魔法が使えて歓喜している僕とは裏腹に、エミリア様は眼前に指を突きつけ、さらに大きな声を上げ凄んでくる。あまりの剣幕に僕はただただ身をすくめるしかなかった。


 そんなこと言われましても、、これが精一杯なんです、、これでも頑張ったんですよ。


「あはははは、エミリアそれくらいにしてあげなさい、きっと伊藤殿は感情の起伏によって魔法力が変わるタイプなのでしょう」


「それより大猪に木の棒で立ち向かうなど些か無理がありましたね。左腕怪我してしまっていますよ。私の治癒魔法で治療して差し上げましょう。見せてください」


 完全に萎縮してしまった僕を見兼ねたのか、この領地の嫡男、ご令息のレオン様が助け舟を出してきてくれた。


 ふぅ〜、助かった〜!怖かった〜。

 えっ?あれ?でも今なんか言ったな?僕が怪我してる?


「うぉぉぉーっ!!何じゃこりゃ〜っ!」


 左腕が肘から変な方向に曲がってるではないか!

 全然気が付かなかった!

 見たら急に痛くなってきた!


「ぎゃ〜、痛い、痛い!」


 レオン様は呆れた顔をして何か言いたげなエミリア様を制すると、暴れのたうち回る僕の腕を優しく掴み、何かボヤッと光り輝いているものを手から出し腕にかざしてきた。


 凄い!一瞬で痛みが無くなったんですけど!?

 そして掴まれている腕を起点にして全身に鳥肌が駆け巡った。


 うっわーっ!綺麗な顔だなー!!

 レオン様が超絶至近距離にいるんですけどっ!。


 絹糸のような滑らかな金髪をなびかせ、宝石のような青い瞳を輝かせている。筋の通った鼻にシャープな顎、きめ細やかな素肌。


 いやもうこれ、彫刻じゃん!

 同じ人間とは思えないんですけど!


 こんな方に治癒魔法使ってもらえるなんて、、なんかメッチャご褒美タイムなんですけど。

 僕は不謹慎にも同性であるレオン様に胸をトキめかせてしまっていた。


「お兄様がそんな下劣な人間に治癒魔法をお使いになるなんてもったいないです。私がやります」


 そう言うとエミリア様はレオン様を押し退け手をかざしてくる。下劣な人間ってちょっと酷すぎやしませんか?エミリア様?僕は傷つきましたよ。


 先ほどと同じようなボヤッとした光が左腕を包み込み、腕を正常な状態へと戻していく。そしてこれまた同じく触れられた瞬間、全身に鳥肌が駆け巡っていた。


 エミリア様も彫刻のように整った綺麗な目鼻立ちをしていて本当にお美しい。魔法を使っているためか身体が淡い光に包まれていて、さながら目の前に天使が存在しているのではないかと錯覚させる。


 きっれ〜だな〜っ!

 こっちにトキめくのは問題ないよな、一応女なんだし。

 怖いけど、、。


「これでよし」


 エミリア様はそう言うと完全に治った僕の左腕をピシャリと叩いた。

 痛いと思って左目を瞑った瞬間だった。空中に何か文字のようなものが浮かび上がっているのに気付く。

 目を凝らそうと思い両目を見開き空中に注視すると、文字は消えてしまっていた。


 あれ?今のは何だったんだ?

 もう一度左目だけ瞑ってみる。


 あっ!また文字が浮かんだ?


 今度は右目を瞑ってみる。

 何も見えない?


 何度か右目を瞑ったり、左目を瞑ったりを繰り返してみるとこの現象は左目を瞑って右目だけで人を見ると現れる現象だということがわかった。


 浮かび上がっている文字はというと、、。


 氏名 エミリア・ツー・ミットラー

 性別 女性

 年齢 16

 Lv 27

 攻撃力 68 攻撃耐性 68 魔法力 82


 もう少し細かいデータも表示されているが、まあこんな感じの文字が浮かび上がっている。


 何じゃこりゃ?


 何度か開けたり瞑ったりを繰り返していると、左目を瞑って右目を開けたまま手で覆い視界を塞ぐと、自分のステータス?のようなものが浮かび上がるということも分かった。


 氏名 伊藤 良太

 性別 男性

 年齢 18

 Lv 1

 攻撃力 1 攻撃耐性 1 魔法力 1


 ・・・・僕ってレベル1なの?


 まあそうかこっちの世界に来たばっかだもんな。

 でも年齢が20くらい若返ってる!これはかなりの朗報だぞ!

  

 つーか、記憶が混乱してんだけど。

 さっきからこの状況なんなの。


 おぼろげだけど女神様にこっちの世界に行って、こっちの世界に巣食ってしまったモンスターを退治して欲しいと言われたような、、言われてないような、、。


 普通に仕事行って帰ってきて、飯食って、風呂入って、寝てたらなんか夢でも見ているような感じになって、女の子がモンスターに襲われていたから格好良く飛び込んで行って火炎魔法使って、モンスターを丸焼きにしたんだよね?


 あれは夢だったのだろうか?


 エミリア様の言葉からしても夢ではなかったんだと思うが、その後、何でこうなったんだ?


 レオン様の話ではいきなり大猪が現れて僕達の前に立ち塞がったので、僕が木の棒を拾って大猪に向かって行ったってことのようだが、、。

 そしてその後、僕は大猪に弾き飛ばされてしまったらしいので、その時の衝撃で記憶が飛んでしまったのだろうか?


 あーなんて事だ!女神様から無敵の能力を授けられ、悠々自適に過ごせたはずの僕の異世界生活がいきなり頓挫してしまったという事なのだろうか?


「お前さっきから何ボーッとしてんだよ?マジで打ちどころ悪かったんじゃねーのか?」


 えっ?


「ぎゃーーっ!馬が喋ったーーっ!!」


「はぁー?何言ってんだお前?お前も喋ってんだろうが、馬が喋っちゃ悪いのかよ!」


 えっ!そうなの?こっちの世界では馬が喋れるのは普通なの?


 そういえばレオン様もエミリア様も馬が喋っているところには無反応だ。それどころか僕が何に驚いているんだろう?とでも言いたげな視線を向けているような気がする。


 つーかコイツ馬のクセして何でレベル上がってんだよ!


 名前 パトリシア

 性別 雄馬

 年齢 3

 Lv 7

 攻撃力 35 攻撃耐性 28 魔法力 15


 ということはもしかして!

 

 名前 レオン・ツー・ミットラー

 性別 男性

 年齢 18

 Lv 32

 攻撃力 98 攻撃耐性 98 魔法力 91


 となるともしかしてこの中での序列は『レオン様→エミリア様→馬→僕』ってことになるの??


 えーっ!じゃあ、僕は馬より序列下ってこと?

 そりゃーないよー!女神様ーっ!


「コラっ!テメー!馬、馬、言ってんじゃねーよ!この下劣人間が!俺を呼ぶ時はパトリシア様と呼べ!呼ばねーともう乗せてやんねーぞ!このアホンダラが!」


 わーい、完全に馬に見下されましたー!!


 とほほ、、いきなり始まった僕の異世界生活は馬以下の序列から始まるみたいです。

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