第34話 笑也の秘策

 「恋吉さんはどう思ってるのよ」

 「えっと、俺氏はだな……」


 言葉に詰まってしまう。しかし“クズ”ならば言わねばならぬ。俺氏は意を決っする。


 「どうでもいい」

 

 するとマイマイは言う。


 「アナタって“クズ”ね」


 少し“クズ”に近づけた。ホッと腰を撫で下ろす。角藤氏は笑ってくれた。


 「恋吉はんはオモロイでんな〜。”クズ“でっしゃろ?」

 「新ネタでも火脇氏に披露したらどうだ?」


 ……。空気が固まった気がする。


 「アナタ上手い事言うじゃない」

 「ござっ!ズバリでござる」

 「何やと、そがいな方法があったんか」


 蓋を開けてみると賞賛の嵐だった。


 「そのネタはあるのか角藤氏」

 「あるにはあるんや」

 

 俺氏達は「オー」と声が上がった。角藤氏はニヒルな笑みを見せる。そんなに自信があるんだな。


 「今、出来るの?笑也さん」

 「出来るで、例えばこのオムライスを食べるやろ?そんなら一口食べるフリしてな、こう言うんや。……パクリ。こ、このオムライス激うま!酸味があるケチャップに口当たりの良い半熟卵。ニャンコも相まって、うまうま〜。……って感じやな。あとこれに太志はんと普家はんが入る。太志はんが大将になって鮨を握り、晋家はんが酒に酔っているサラリーマンって事や」


 よく考えてある様だ。


 「とにかく、明日勝負や!」

 「面白いわね。私たちに出来る事は無い?」

 「出来れば助けて欲しいけど芸の道は厳しいんやぞ?ワテら三人で十分や」


 角藤氏の意志は固い。俺氏が思うに火脇氏には勝てない。しかしひと笑いでもさせたなら一矢報いたと言う事になるだろう。それを狙えば良いと思うのだが、本人がガチンコでリベンジする気満々だからな。

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