第33話 オタ芸

 とにかく野村氏は激しく荒ぶっている。汗だくになってサイリウムを思い切り動かし恍惚の笑みを浮かべていた。とかく俺氏達は反応に困った。なぜ困るか。それは俺氏達が一緒になってテンションを上げればいいのか落ち着いて下げればいいか分からなかったからだ。されどクズノートにも書いてあったメイド喫茶。……このライブが“クズ”とどう関係があるんだろうか。一抹の不安を抱えてライブが終わる。只々、野村氏は凄かった。


 「これが拙者の全力全開でござる」


 プハーっと息をはく野村氏。満足したのだろうか。満足したよね?


 「まどかはん。あの芸って教えてもらったんか?えらい一生懸命やったな。驚いたでホンマに」

 「自然と体が動くでござる。されどあの動き。オタ芸でござるが石の上にも三年でござる。拙者は小学生のときから習っているでござるから四〜五年はやってるでござる。ところで笑也どの、何でメイド喫茶に来ようとしたでござるか?」


 話を振られて明るく答えると思いきや、一転暗くなる角藤氏。ここで麻居氏は鋭く反応する。いつ頃から見たキラーアイだ。


 「朝の事ね?笑也さん」


 あぁ。火脇氏の事か。簡単に言えば朝、火脇氏がキレて三バカトリオが負けた。あの事件の事だ。


 「悔しいんや、火脇勝也に……大切な友達がやられてもうた。どうしたら火脇勝也に勝てるんや?」

 「そうよ。どうにかするべきよ」

 「拙者もいたでござるが悲鳴を上げてしまったでござる」


 三人は火脇氏をどうにかしたいで纏まっている様だ。俺氏はどうでもいいと思ってるんだけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る