第15話 vs悪

 【セブン・デットリー・シンズ】 では、【七つの大罪】だけではなく、沢山の敵がいる。

 奴隷組織、盗賊、山賊、国ごと相手にすることもある。

 とはいえゲームだ。敵なんて、多ければ多いほどイベントがあるってことで、プレイヤーからすれば面白い要素の一つ。

 こういった豊富なサブストーリーが人気の秘訣だった。

 そして今、その物語の一つが動き出したらしい。


 使用人たちが寝静まり、いつものように深夜に本を読んでいたときだった。


『不穏な魔力を感知しました』


 突然、『案内人こっくりさん』の声が脳内に響いた。

 尋ねれば応えてくれるけれども、自動で聞こえてくるときはめずらしい。

 思わず身体をビクっとさせる。幽霊かと思った。いや、名前は幽霊の一つではあると思うが。


 ――不穏な魔力って?


『屋敷外です。今までにない悪意を感じます。魔力探知を使用すれば、より明確にわかるかと思われます』


 魔力探知は、地面や壁を通じて魔力の波紋を広げさせる技だ。暗闇だったり、遠くで誰がどこにいるのかを把握するもの。

 未熟であれば数メートルしか感知できないが、達人であれば数百メートルも可能だったりする。

 かくいう俺はセンスがあったらしい。かなり広い範囲を調べることができる。

 屋敷内に魔力感知を広げると、確かに沢山の魔力を感じた。それも、不穏な魔力だ。

 肌にヒシヒシと伝わってくる。

 

 例えるなら暗闇のトンネルを見たときのような感じだ。悪寒が走り、目に見えない何かを見つけたり、想像してゾゾゾとする感じ。

  

 これの答えは殺意。


  【セブン・デットリー・シンズ】 では沢山のキャラクターが死ぬ。

 いずれこんなこともあるだろうと思っていたが、まさか屋敷に敵が直接現れるなんて想定していなかった。


 急いでキャロルやエヴィ、ベリル兵士長に伝えねば。


 扉を開け、廊下に出る。

 すると驚いたことに、ベリル兵士長が剣を携えて立っていた。


「スロース様も気づいたのでしょうか」

「え? は、はい。いつから気づいていたんですか?」

「あなたとそう変わらないと思いますよ。一人で始末するので、中へお戻りください」


 今でこそ師匠のように思っているが、ベリル兵士長の仕事は領地と雇い人を守ること。当然だが、俺も含まれている。

 それが少し悔しかった。

 肩を並べているとまでは思っていなかったが、対等に見てほしかったからだ。

 普通に考えたら当たり前のことだ。

 しかしここで影に隠れているようでは今後生き抜くことなんて不可能だ。


「俺もやります。いや、やらせてください」

「雇い主のご子息に何かあれば、クビではすまされないんですよ」


 それでも、と強く食い下がった。

 するとベリル兵士長が優しく微笑む。


「わかりました。死ぬのはもちろん、怪我もしてはいけませんからね」


 俺を信用してくれたのだ。それが、嬉しかった。

 一番敵が多そうな裏門はベリル兵士長が。

 俺はもう一つの扉へ向かった。


 そのとき、魔力探知が反応し、敵が動きだしたのが分かった。

 剣を構えて、敵を待ち伏せする。

 


「――!?」


 飛び出してきたのは、黒ずくめの男、二人だ。

 武器は持っていない。暗器か?

 何を使うかもわからない。これが、実践か――。


「――ハッ」


 浅い呼吸を吐き出し、男が俺に右手を向けた。

 魔法を使えるみたいだ。

 しかし先手はくれてやらない。

 壁を蹴り、照準が定まらなように動きながら、前へ進む。


 それがやれ幸いだと思ったのか、もう一人の男が、正確に俺に剣を振りかぶった。

 しかし――。


「――遅い」


 ベリル兵士長の足元にも及ばない。

 攻撃を避けると、敵の右腕を切り落とした。


「――ギャッアアアアア」


 悲鳴が木霊し、奥の男に視線を戻す。


「……何者だお前」


 吐き出すような悪態をつきながら、男を睨んだ。

 そして右手を構えて何かを呟く。しかし、何も起こらない。

 男は焦った様子で何度も同じ動作をした。


 無駄だ。

 陰陽五行は、既に詠唱している。

 出し惜しみはしていない。


「――使えない、だろ?」

「な、なんで――ギャアッ!!」

 もう一人の右腕を落とし、すぐに魔力探知と視界を広げた。

 近くに敵はいないようだ。男たちは、痛みで地面をのたうち回りながら悲鳴を上げている。


 驚いたのは、思いのほか自分が冷静だったことだ。

 腕を斬るなんて残虐な行為に、何の感情も響かない。


 一応、スロース・エンヴィルドということだろう。


 二人の男を逃がさないように警戒していると、キャロルが現れた。


「スロース様、ご無事ですか!?」

「大丈夫だ。怪我はないか?」

「はい。大変申し訳ございません。遅れてしまいました」


 メイドは俺の身の回りをするのが仕事だ。戦闘要員じゃない。

 いつも頑張ってくれている。

 それからキャロルは、見事な手際で男たちを縄で縛った。

 どこで覚えたんだろうと思うくらいの亀甲縛り。これでは逃げだすことはおろか、動くこともできない。

 いや、ちょっとだけ動けるか。


 そういえばエヴィは――。


「終わりましたわ。敵に念動力を使う相手がいたので、頂きました」


 振り返ると、エヴィが三人の男たちを浮かせていた。全員気絶しているらしい。

 風魔法から念動力に変化したということか。


 ふたたびキャロルが縛った後(亀甲)急いでベリル兵士長の元へ向かった。

 しかし既に十人ほどの男たちが地面に倒れていた。

 どれもこれも瀕死らしい。さらに全員の足が折れている。逃げられないようにということか。


「さて、誘拐か、それとも殺人か、ここからが本番ですよ」


 次の瞬間、一人の男の右目に剣を突き刺した。

 痛みで叫び声を上げる中、ベリル兵士長は眉一つ動かさない。


 こ、こえええええ。


 よく考えると、キャロルもエヴィも服に返り血一つ浴びてない。

 

 俺も、もっと頑張ろう。


 てかこいつら、マジだれなんだ。


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