第5話
その日は気合を入れて、佑月はヘアセットと化粧をして壮太の家に足を運んだ。
出迎えてくれた壮太は驚いた様子で、佑月を見て少し照れたように、顔を見られない様に前を歩きながら部屋に案内してくれた。
壮太の部屋は男子の部屋といった感じで、本棚には少年漫画、棚にはいくつかのプラモデルが置いてある。
「これが男子の部屋……」
「初めてか?」
「うん。って言うか、人の部屋に入ることがあんまりなかったから女子の部屋も知らないけどね」
「まあ、これから友達の家に行く機会なんていくらでも増えるだろ」
「そうだと嬉しいな。じゃ、早速借りるね」
「ああ。俺はお茶とか盛って来るよ」
佑月は一番メジャーな漫画の一巻を取って、ベッドの縁に座る。
ふといきなりベッドに座るのは不用心すぎるのではと気づいたが、もう今更なので、そのまま漫画を読み進める。
「佑月、持って来たぞ。お前のはオレンジジュースな」
「あ、前好きって言ったの覚えててくれたんだ。ありがとう」
普段からクラスでもトップクラスに美人な女子と話している時には見せない、照れたような顔をしながら壮太は「ああ」と淡泊に答える。
「そうだ、わたしもおすすめの持って来たから、一緒に読もうよ」
「読書会か。まあそう言うのもいいな。小説?」
「うん。これ」
佑月はリュックに入れていた小説を五冊ほどだし、壮太に手渡す。それは、昨日見たアニメとは違うシリーズのおすすめのラブコメのライトノベルだ。
「これは知らないタイトルだ」
「結構面白いから、ぜひ読んで」
「あ、ああ」
かくして、二人が黙々と本を読む、カップルの二回目のお家デートとは言えないようなデートが始まった。
佑月は漫画なのでサクサクと読み進め、何度かベッドと本棚を行き来する。そうしているうちに地味な移動と読書で少し頭を使っていたことで疲れてきて、六巻辺りまで読み進めたところで、佑月は無防備に「んん~っ」と声を漏らして体を伸ばし、ベッドに横になる。
ぐっと足も延ばしたせいでスカートが少しまくれ、太ももまで丸見えの状態だ。
佑月の声に反応してちらっと佑月の方を見た壮太は、動揺と下心を必死に抑えながら、佑月の隣に座り、お腹に手を置く。
「ゆ、佑月、無防備すぎるんじゃないか?」
「あはは、疲れちゃって気が回らなかった」
「そういう無防備さだと、俺も、我慢出来ないかもしれないぞ」
「…………」
「別に、ちょっとだけならいいよ」
ちょっとだけ――頭を撫でたり、手を握ったり、今ならその程度は許せる。しかし、佑月の言うちょっとだけと、壮太の思うちょっとだけはまた違うもので。
「触っていいか?」
「もう触ってるでしょ」
「そ、そうだな……」
壮太の手が徐々に上に這って行く。服はそのままに、するすると手を這わせ、壮太の手はついに胸に触れた。
「い、いきなりそこはダメだから!」
咄嗟に佑月は手を振り払い、体を起こして壮太から離れる。
嫌な気分――ではなかった。が、これ以上はダメだと、本能が告げている。
由夏にされたのとは違った感情が湧き出てきた。由夏の言っていた一ヶ月以内というのも、もしかしたら、なんて考える。
「わ、悪い! 嫌、だったか?」
「ううん。嫌じゃないけど、まだ恥ずかしいから、ダメ」
「そっか。ごめんな、怖がらせた」
「気にしないで。続きは……また、そのうち、ね?」
生殺しにしたみたいで申し訳ないとは思いつつも、恥ずかしさが勝り、佑月は「それ、ちゃんと読んでね」と言いジュースを飲みほし、荷物をまとめて急いで部屋を出た。
今日はもう帰ろう。
このままだと本当に許してしまいそうだが、まだ怖い。しかし、体はそれを許してしまっている。理性と本能の狭間で揺らぎながら、佑月は小走りで家に帰った。
家に帰って荷物を置き、佑月はすぐ由夏の部屋のインターホンを鳴らす。
「はーい……って、佑月じゃん。壮太はどうしたの?」
「その、話すから、入れて?」
身長差もあるが、無意識に上目遣いで由夏にそう言うと、彼女はにやにやしながら部屋に上げてくれた。
「んでー、何があったわけよ」
「疲れたから、ベッドでごろっとしたの。そしたら隣に座ってきて、お腹に手置かれてね」
「ほほぅ」
「それで、そんな無防備だと我慢できないって言うから、ちょっとだけならいいよって言ったら、胸触られて、恥ずかしすぎて逃げてきちゃった」
「嫌だった?」
「ううん。嫌じゃない、けど……」
「ひゅ~、初心だねぇ! ふふっ、次に備えて、あたしで練習しとく?」
「練習って……」
「触られることに慣れとかないと、一生進展しないよ?」
「それは、そうだけど……」
そう答えるが、有無を言わさず由夏は佑月の胸を鷲掴みする。
「ひゃっ、急にダメ!」
「いいから、あたしに身を委ねて」
女子同士という事に加えさっきの事もあったせいか、断れない。まだ仲良くなって間もないのに、許せてしまう。
「やっぱり佑月、むっつりさんだ」
「う、うるさい」
されるがまま、由夏の行為をすべて許す。
服をはだけさせられ、下着もちらりと見えている。その状態で、いやらしい手つきで胸を揉まれる。
「んっ……」
「続き、あっちでしよっか」
そう言われ、佑月は由夏の私室のベッドへと移動する。
そこで横になり、再び由夏に身を委ねる。
移動しながら、ブラウスのボタンは全て外した。女子同士だから下着を見られることへの羞恥心は少ないが、これが壮太だったらと想像すると、恥ずかしさで死んでしまいそうだ。
「佑月、可愛い下着付けてるじゃん。それに、化粧も髪もばっちり。準備してたの?」
「そういうわけじゃないし……ただ、お姉ちゃんの受け売りで、外出るときはなるべく一番可愛いわたしで居たいって」
「まあ確かに、勝負下着っぽくはないけど」
「そもそも、わたし下着お姉ちゃんと買いに行くから、こういうのばっかりだし」
「なーんだ、そういう事か」
言いながら、由夏は佑月の下着を上にずらす。
「ふふっ、こっちは準備出来てるみたいじゃん」
「それは、生理現象で……」
「こっちも――は、やりすぎだから、やめよっか」
「やめ、ちゃうの……?」
「これ以上は洒落にならないでしょ」
確かに由夏の言う通りだが、これは練習で、女子同士だ。きっとこの先、これ以上の事も起こるだろう。その時また逃げてしまわない様に――なんて、頭の中で言い訳をいくつも作る。
「さっきから、お腹、疼くの」
佑月の理性は、すでに欲求に支配されていた。
男子と初めてのあれほどの接触に加えて、由夏からの助言。それに、昨晩の夢。それらが重なって、当に佑月の理性は決壊していたのだ。
そこまで言うならと、由夏は佑月の下腹部に左手を添え、そっと下に下げていく。ぷっくりと膨らんだピンク色の蕾を執念に攻めながら、濡れた下着をずらす。
そこからは、流れるままだった。
佑月が果て、ようやくソレは終わった。
由夏が濡れたシーツを取り換えているうちに、佑月はやってしまったと後悔しながら服を着る。結局、最期までシてしまった。これはあくまで練習だから、そう言い訳して、女子と最期まで行為に至ってしまった。
浮気に入るのか入らないのか佑月にはわからないが、罪悪感も湧き出してくる。
きっと今頃、壮太はその後の事を想像しているのだろう。合わせる顔がない。お試しとはいえ、悪い事をしてしまった。
だが、まだ由夏にされたあの感覚と快楽が頭から離れない。弱い所をすぐに見抜いて、的確に、執念に何度も何度も攻めて来る。佑月からは何もしなかったが、されることを許してしまった、その事実は変わらない。
女子同士とはいえ、今になって恥ずかしくなってきた。
「佑月、顔真っ赤だけど……」
「し、仕方ないじゃん、あそこまで、しちゃったんだから……」
「誘っておいてなんだけど、あたしもあそこまでヤるとは思ってなかったよ」
「だって、我慢、出来なかったから……」
「あれなら、壮太とも出来たんじゃないの?」
「無理だよ! まだ手も繋いだことないのに……」
「それなのに、話すようになって二日目のあたしとは大丈夫なんだ?」
「いきなり一緒にお風呂入ったりしたし……」
言い訳ばかりが口から出る。結局は、ただあの時開放しきれなかった欲求を発散したかっただけなのに。
「まあ、佑月妙にあたしにすぐ懐いたもんね」
「お姉ちゃんみたいで、安心感あったから」
「それ、あたしが妹に手を出すタイプの奴みたいになるんだけど」
「わたしが勝手にお姉ちゃん見たいって思ってるだけだから、気にしないで……。その、シーツ汚してごめん。わたし、帰るね!」
「うん。色々思うことはあるだろうけど、まあたっぷり悩みな~」
また、佑月は逃げ出すように由夏の部屋を出ていった。
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