これがプロ作家の文章……圧倒されます。
社会人ラブコメというジャンルは初めて読みました。
恋人ではない曖昧な関係性の中に、優しさ、気遣い、愛情? ……確定しないフワフワとした柔らかいものがたくさん感じられて、読んでいて私も浮ついた、落ち着かないのに心地よい気分を味わうことができました。
主人公はまぁ、そりゃモテますわね、という仕事が出来そうな男の魅力たっぷりです。
表現がとにかく素敵な作品です。
魔法も冒険もない日常をこんなに特別に、目を見張る鮮やかさで書けるとは……そんな驚きの連続にワクワクする読書体験でした。
素敵な言葉と出会うたびに、読書を一旦休憩してまじまじと文字列を再度目で追って、ため息を吐いてました。
現在、作者の七転先生を中心に密かに注目が集まりつつあるジャンルです。
今までと少し違う恋愛作品をとお考えの方は、是非とも読んでみてください。
この小説は、しっとりとした情感が心に染み入る、静かで深い再会の物語です。
初夏の夜、電車で偶然元恋人と再会する主人公の心情が、湿気を帯びた空気とともに丁寧に描かれています。
過去の甘く苦い記憶がフラッシュバックし、懐かしさと切なさが交錯する瞬間は、静かに胸を濡らし、読者にその場にいるかのような感覚を与え、しっとりとした余韻を残します。
二人が居酒屋やホテルで過ごす時間は、刹那的でありながらどこか温かく、過去と現在の微妙な距離感が繊細。別れと再会を繰り返しながらも、関係に名前をつけず曖昧なまま進む二人の選択は、深い寂しさを含んでいるように思えますね。
出張先での偶然の再会や、ミモザのグラスを傾けるシーン、駅での別れ際のキスなど、どの場面も大人で湿っぽい雰囲気が漂い、二人の間に流れる未練と愛おしさが読者の心にじんわりと広がります。
この作品は、再会の美しさと儚さを湿った空気感とともに描き出し、読後に静かな感動とほろ苦い余韻を残す傑作。おすすめです!