第10話 研修 カリキュラム
「どうですか?自信がないようでしたら、契約破棄やサポート業務専任も可能ですが」
私が特に問題ないとと答えると
「素晴らしい、あの方の見立て通りだ」
恐らく、私をリクルートした老人だろう。しかし、私にスナイパーが務まるのだろうか。そのような不安を察知したように
「身体検査やペーパーテストの結果から、あなたは肉体的にも経験的にも非常にこの職業に適していると評価しております」
よく分からないが、私は言われたことを実行するのみだ。翌日は8時から研修が始まる。基本は午前中が肉体的訓練で午後が技術と知識の習得訓練になる。その日は研修所の食堂で夕食を取った。和洋中が選べるが作り置きでなく、その場で作っていた。頼んだ和食はおかず自体は質素であるが、味、素材とも非常に素晴らしく、全体的に薄味であるが、コクがあり、深い味の奥行きと今まで食べたことがないほどの旨さだ。残さずすべて平らげ、休憩所で一休みして、大浴場で体を温め、自室で就寝した。驚くべきことに、スタッフ以外の人間とは顔を合わすことは無かった。私の貸し切りと言う訳ではないのであろうから、上手く調整しているようだ。私には関係は無い。守秘や集団での暴動、反抗などを恐れた対応だと思うが、孤独に耐えれない人間にはきついかもしれない。まあ、私にはあまり関係は無い。翌日の朝食も素晴らしいものだった。高級レストランの朝食と言っても良いほどだ。サラダとスープ、ベーコンとスクランブルエッグ、パン、ヨーグルトと普通のメニューであるが、サラダはドレッシングがいらないほど、野菜の味があり、カリカリで最高の焼き具合のベーコンとふわふわのスクランブルエッグ、パンは口の中を広がり鼻から抜けるような芳醇に香り、食後の珈琲もフルーツを思わせるような香りと共にバランスの取れた苦みと酸味のある、最高級のものだった。一息ついて、研修場に向かった。
午前中の訓練は、よく分からなかった。海岸線まで下りて行き、やや重めの楽器ケースのようなものを持って山頂まで登り、さらに展望台を駆け上がり、さらに荷物を持ってまた海岸線まで戻る。これを数回繰り返すというものだった。
ロートルとは言え、バードウォッチングで山歩きは慣れていたし、体力もあまり衰えてはいないので、特に問題は無かった。このメニューはこの先もスピードを上げる指示や回数を増やすことは無く、淡々と島を出るまで続けられた。昼食をとり、午後からは研修所に戻り、ライフルや武器の取り扱いについて、実地と理論の研修。初日は取り扱い方法についてレクチャーを受けた。実物を触るのは初めてだったが、何故かしっくりと来た。スコープは単眼で双眼鏡とは異なるが目標を視界に入れて動きを見ることには変わりがない。取り扱い自体は慣れが必要だろうが何とかなりそうだという根拠のない自信のようなものが湧いてきた。その後は、ライフル含めた銃器の仕組みについて、どのように弾丸が発射され当たるとどのようになるかなどのレクチャーを受けた。約ひと月ほど続いたこのレクチャーの後半にはライフルの分解組み立て、気圧や湿度による弾丸の軌道への影響など実地に近い内容になって来た。
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