俺、魔王軍の雑兵でした

 目の前のガタイのいい男――どうやらこの部隊の指揮官らしい。彼は俺をジロリと睨みつける。


「お前、新入りか?自己紹介も無しかよ!」


「え? あ、俺は……」


 慌てて言葉を探すが、そもそも俺の名前は何なんだ?


「貴様は今日から魔王軍の一兵卒だ!名乗るほどの身分じゃねえ!とにかく、剣を持って前線に行け!」


「いやいやいや!俺、なんで魔王軍の兵士になってるんだよ!?」


 状況を整理しようとするも、まったく理解が追いつかない。 しかもこの世界、『エターナル・ワールド』と酷似している。


「……つまり、俺はこのゲーム世界の雑兵として転生したってことか?」


 混乱しながらも、俺はひとまずこの世界のルールを探ることに決めた。


「前線に行けって、俺、戦えるわけないんだけど?」


「黙れ!命令だ!従わなければ処刑だぞ!」


 いや、物騒すぎるだろ……!


 俺は周囲の兵士を見渡す。誰もが戦う気満々だが、正直、俺には 圧倒的に経験値が足りない。


(戦えば即死確定……だが、俺にはゲーム知識がある。何か抜け道があるはずだ……!)


 このゲームには、バグ技がいくつか存在した。その中でも一番役に立ちそうなもの――


「よし、俺、やるよ! でもちょっと準備させてくれ!」


 そう言って、俺は陣地の端へ移動しながら、密かに あるバグ技の準備を始めた。

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