第2話 札付き、襲来

 コロニーからコロニーに引っ越すことは禁じる規定はありません。健康であるか、コロニーでやっていることと相性がいいか確認があるぐらいで。まれによくあるのが弾かれた人を受け入れること。今日もそんな感じで札付きの"ワル"さんがきました。確認はもちろんしてます。健康優良児なので問題はありません。


「……」


 隔壁の前ですごい勢いですごまれているので、カメラをアップにして睨み返してやります。残念ながら思ったような効果は得られませんでした。個人認証は無事に終わったので隔壁をあけて、コロニー内部へご案内。しばらくは洗濯と洗浄が続くので、そこだけは頑張ってください、人類。

 数時間後、新品の標準服に着替えて、髪はぼさぼさ、眼光の鋭さは相変わらずの"ワル"さんがいました。洗濯と洗浄に慣れていそうなので、照会してみたら案の定、あちらこちらのコロニーを転々としています。最初は従順ですがある日突然、暴れだして、追い出されるの繰り返しです。流浪の始まりがコロニー「パピルス」なのは気になりますが、先入観を持つはよくありません。

 調査は程々にしてまずはご挨拶を。


『ようこそ、コロニー「アスチルベ」へ』

「……お前が管理者か」

『他のコロニーでいう管理者に該当します』

「しらばっくれるつもりか」


 どこが最初は従順なんでしょうか。最初からすごい反骨精神溢れてて、何か出汁が取れそうです。説明が遠回しで不信感を買っているのかもしれません。しらばっくれるつもりはありません。ただ、長い話は嫌いでしょう?


『施設の管理はしていますが、コミュニティ運営などは住人に任せています』

「どうだか、この目で確かめさせてもらうぞ」


 鋭い眼光がレンズ越しに伝わってきます。こぶしで語り合う必要性があると思うのですが、コロニー環境測定用生体だとパンチ力が足りないのでやめておきます。過剰な対応かもしれませんが、要監視者リストに追加です。


『どうぞ』


 ふん、と鼻で笑って"ワル"さんは通路を去っていきました。カメラを見つけるたびに睨みつけて。よほど、他のコロニーの管理体制が気に入らなかったのでしょうか。調べてみると、"ワル"さんがいたどのコロニーも運営ルールが整っていて、何をすれば報酬があり、何をしたら罰則があるのか明確にされてます。"ワル"さんはむしろ、報酬もらっていて、罰則に触れることはしてません。それでいてある日暴れだすのは矛盾しています。

 最初から暴れだすのでは、と注意を払ってみましたが、他の住人に案内されているときは協力的な態度と柔和な表情を見せてます。ガイダンスは滞りなく終了、"ワル"さんは指定された部屋に戻ると、静かに鍵をかけて、ゆっくりとしはじめたようです。ここから先は住人から招待がない限りは見られません。通路に大きな声や音を響かせてないか念のためモニタリングします。その日は特に何もなく無事に終わりました。

 ほかのコロニーと動きが最初から違うのですが、これは初対面で嫌われちゃいましたか、私。泣きますよ?

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