鏡写しのダ・カーポ

妹の学校は定期的に合唱部の公演を開いていてそれを見に行った少女は愕然とする

(妹ほどでは無いにしろ技術偏重で心を込める事を蔑ろにしているため)


そして自分と妹達の違いを考えた時心の空白とそれを埋める為に笑顔で歌う妹が必要だと気づく



歌わなくなったあの日心に出来た空白

でもそ貴方にもあったんだよね


でも私は

歌う楽しさを思い出させてくれた少年が

支えてくれた両親が

共に笑った仲間が

少しずつ埋めてくれた


だけど貴女は全然埋めれて無いんだね


だからその空白は私の歌で埋めるよ

傷つけた償いとして


それよりもなによりもお姉ちゃんとして




そしてその夜の事


練習室で歌う妹の歌は昼間と変わらず心ない技術だけの歌でした


意を決して入る少女


少女「妹・・・」


少女を気にせず歌い続ける妹


妹「なに?暇じゃないんだけど」


久しぶりに間近で見た妹の目は幼い頃とは違い何も写していないように見えた


少女「今日の公演、見たよ」

妹「ふうん、それで?」

少女「なんだったの?あの歌は?」

妹「何か問題?お姉ちゃんより上手かったよね」

少女「そうだね。音程もテンポも声も全く狂わない、それは私には出来ない。でもあの歌は聴いてられなかった」

妹「何よそれ?下手なお姉ちゃんの僻み?」

少女「そうじゃない。あの歌には心がこもってなかった」

妹「心?そんな物誰にも届かないでしょ、それはお姉ちゃんが証明してくれたじゃない」

少女「それは…」

妹「でしょう?それで?そんなくだらない事を言いに来たの?」



少女「ううん、違うあんな歌を歌ってちゃダメ」

少女「だから、お願い。あなたの本当の歌が聴きたいの。一緒に歌おう?」


妹「お願い?聴きたい?歌おう?」 

妹「何?それ。よくそんな事言えるね❗️私がそう言った時どう答えた?」


それは姉妹の断絶したあの時


『お姉ちゃんお願い お姉ちゃんの歌聴きたいの 一緒に歌おう?』


妹「あの時に言われた言葉そのまま返すよ!『うるさいな!放っておいて!私は歌わない!出てって‼️』だよ!」

妹「今更になってそんな事言わないで‼️これが私の歌なの!この歌しか!…ないの」


少女「妹、それは違う!貴女の本当の歌はもっと・・・」

妹「やめて!しつこいよ!」




妹「もういいの。…出ていって!」


そう言って少女を追い出す妹

だけどなぜか言葉ほどには力が無く



静かに閉ざされた扉は心を守る殻のようで

少女の背中を追う旋律は何も変わらずに無機質で

でもただ一つ、最後の休符には確かに黄緑色が微かに淡く滲んでいた

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