第22話
…数日後、飛行機の中、金色の大きな盾が、オレの隣りにあった。
窓の外を見ながら、
紅茶を飲む。
カメラをもった人が、オレの近くまで来たけど、オレはすぐ、眠るふりをした。
日本人が取材に来ていたのだ。
面倒になって目を瞑っていたけど、うとうとするようになってきた。
すると、何処からか
キー・・・と、バイオリンの音が聴こえてきた。
オレは、目を見開いた。
子供と母親の声。
子供が注意されている。
どうやら、暇だった子供が弾いたバイオリンだったようだ。
(オレ、次は自分のために弾いてみようと思うんだ。)
そう言ったら、香音が
「もちろんよ」と
返すだろうな。
―…この思いが、彼女との本当の別れの瞬間だった。
以前から、オレは母に
自分の部屋の西側の窓を工事してなくしてしまう事をお願いしてあった。
日本に帰ったら、
もうあの窓はない。
それでも、よかった。
彼女のバイオリンは、オレのために弾いてなかったからだ。
彼女は、オレよりバイオリンを愛していた。
バイオリンが、彼女を連れて行った。
(オレは最初から、片思いだったんだ。)
妙に納得すると、また眠たくなってきた。
日本まで、3時間。
飛行機の中で、
指が鍵盤を欲する。
あたえてあげよう
帰ったら、オレにはピアノが待っているんだ―――。
【あとがき⇒】
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