第48話 闘気VS禁酒
シャルとサリバンの格闘戦はまだ続いていた。
お互い攻撃は当たっているも、素手での戦いだからか、致命傷にはならず、ただただスタミナが削られているのであった。
「あー、クソ!しぶといぜ、あんた。歳考えろよ!」
互角の戦いが続き、疲れが出てきたシャル。
年老いたじいさんなら倒すなんて余裕と踏んでいたが、なかなか決めきれない。
「フン。わしゃまだまだ現役ぞ。若いのに弱音吐きおって。辞めてやってもいいんじゃぞ?」
それに対してサリバンは、まだまだ戦える様子。若い、貧弱とシャルを罵りながら、呆れ顔を向けるのであった。
シャルと出会って間もない俺だが、このあとどうなるかはなんとなく予想がつく。サリバンの態度を見て、多分キレると思う。
殺すまいと加減して戦ってたのに、そんな態度されたら他の強いアーツを使いかねない。
お互い拳も交わして、ある程度分かり合えたはずだろうし、そろそろ辞めにしてもいいんじゃないか?
もしかしたら、サリバンが門を通してくれる気になってるかもしれないしな。
「あの〜、そろそろ辞めにしたらどうかな?」
「「黙って見てろ!」」
はい、すいません! 全然ダメでした!
2人ともかなり頭に血が上ってますね。
こりゃ、決着着くまで止まらないぞ。
止められそうも無いから、仕方なく、その戦いを最後まで見届けることにした。
シャルはステータスプレートを眺め、考える。
門番1人に時間を使ってる場合じゃない。
さっさと終わらせて、フィーネの王と話をしなくてはならない。
だが今のままでは、力が
「仕方ない……使うか」
シャルは悩んだ末に決断する。
ステータスプレートに表示されるアーツ:禁酒を操作。
「何をしとるかわからんが、いいじゃろ、受けてやるぞ若造、ハァァァ!」
サリバンはシャルが何をするのか見届けたくなり、それを真っ向から受けるため、闘気を練り上げている。
シャルはステータスプレートでの操作を終え、そして宣言してみせる。
「今からあんたを倒す。大怪我させるつもりはねーから、倒れたら大人しく王様のところまで案内しやがれ!」
「よかろう、来い!」
サリバンの方を指差して、決めポーズを取るシャルさんかっけーッス。
でもどうするつもりなんだ?
サリバンを怪我させないで倒すって言ってたけど。
俺は固唾を飲んで2人の終わりを見届ける。
「ハァァ!」
掛け声と共にその場から消えるシャル。
「む、なんと!?」
シャルは皆が一瞬見失うほどの速さで、サリバンの懐に潜り込む。
さっきまでと比べると2倍、いや3倍のスピードはあるか。
シャルはそのスピードを殺さず、サリバンを抱え、そのまま城門を駆け上がって行く。
「これで、終わりやー!」
壁を蹴り、宙に舞い、そして抱えていたサリバンを地上めがけて投げ飛ばす。サリバンは背中から勢いよく、地面に叩きつけられた。
起き上がって来ないサリバンの様子から察する。シャルとサリバン、2人の戦いはここで終わるのであった。
……えっと、シャンさんや。怪我させないんじゃなかった?
それ、やりすぎですって。地面凹んでますやん!
サリバンが激突した地面は、俺の位置からではサリバンを確認できないほど、深く陥没したのだ。
「終わったぞー、シエロー」
「やりすぎでしょ、シャル。サリバンさん大丈夫なのか?」
サリバンと時間差で地面に戻るシャル。
遠くで笑いながら手を振っているが、今はサリバンがどうなったかを確認するのが先決。
俺は急いでサリバンの元へ行く。
「あ、あの〜。大丈夫ですか?」
陥没した地面に体がきれいにはまっているサリバンを確認。
「あたたた、おう大丈夫じゃよ。いやーやられたわい、ガハハハハ」
サリバンは普通に返事を返してきた。あれだけやられても元気そうなのはすごいな。
いやー、よかった。死んでたりしたらどうしようかと思ったぞ。
大怪我させないって言っておきながら、ここまでやったのにはビックリしたぞ。
俺はシャルに加減はどうしたと聞くと、これぐらいじゃ怪我しないだろうと思っていたらしい。
サリバンの『闘気』は肉体を強化する技。
『禁酒』の第1段階を使っても互角だったサリバンなら、第2段階を使っても大丈夫とシャルは踏んでいたのだ。
「禁酒の第2段階?」
「ん? あぁ、そうかスキルアーツの内容までは、会議の時話してなかったか。俺のアーツ『禁酒』はな……いや、待て」
俺はさっきのアーツについて詳しく聞こうと思い、シャルの説明を待っていると、城の方からゾロゾロと武装した兵士たちがこちらに向かって来るではないか。
多分、さっきの騒ぎがバレて警戒されたのだろう。
シャルとの話は後回しにして、ここは大人しく、向かって来る兵隊たちに事情を説明しようと思ったのだった。
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