安達原の鬼
鷲巣 晶
第1話 前編
安達原
最終戦争の後、誰もこの荒野に立ち寄らない
この地には古くから鬼がおり、今でも人を攫っては人を喰らうと近くの集落のものが言っていた
「馬鹿野郎が!そんな奴、いるはずがねえだろうが!」
人買い集団『ハンドレッド・アイズ』の副長『一目連の小五郎』は鼻で笑いとばした
今日、解体工場に送り移植用の臓器を引き摺り出す予定の女が、安達原の方に逃げたという目撃者がいる
現在、荒野となっているあそこには、女一人身を隠すには十分な、防空壕跡があるという
都の方では、新鮮な臓器を待っている顧客がいるのだ
それより、何より、このまま女ごときに逃げられたとあっちゃあ『ハンドレッドアイズ』が、兄貴である『百々目の左馬之助』が舐められることになる
俺たちに例外は許さねえ
手間をかけさせた女を捕まえて、
「一目連の兄貴、あそこに洞穴があります。途中で女の髪飾りが落ちていたから、まず、そこに逃げ込んだかと」
「出来した」
弟分たちに連れらた先には、確かに洞窟があった
洞窟からは生暖かい風が吹いてくる
「悪い、俺、暗所恐怖症なんだ。お前たち、二人で行ってくれないか。お前たちが先に女の方を犯っちまっていいからよ」
「わかりましたよ。女一人、兄貴の手を煩わせることもありますまい」
二人はそう言って洞窟の中に入ってゆく
それから5分も経たないうちに、何かが洞窟の奥から飛んできたものが小五郎
に当たった
それは二人の弟分の生首だった
頭が半分、食いちぎられている
まるで肉をしゃぶり尽くしたフライドチキンの骨のように頭部が投げ捨てられたのだ
「な、何だとおおお!!」
腰からコルトガバメントを抜き洞窟に向けて発砲する
何かいる
姿は見えないが何かが、洞窟の中にいるのだ
ズザザザザザザザザ
足音が何かが洞窟の地面を蹴る音が聞こえる
8発全て撃ち尽くされて、コルトガバメントはホールドオープンの状態になった
弾はもう無い
小五郎は見えない何かに押し倒されて地面に押し倒される
「グゲえええ」
自分の上にはダークスーツに身を包んだ女が乗っていた
逃げ出した女『
黒い髪でよく顔が見えない
見えないが、20代中盤くらいの若い女だということがわかった
「何だよ、てめえ、ふざけんなよ。こんなことしてタダで・・・」
女は口を開いた
いや、顔が変形して、牙が生えた口が小五郎に向けられる
シュウうううううう・・・
流れ出た酸性の唾液が小五郎の服を溶かす
「や、やめろ、やめろよな」
何をする気かわかる
ーーこいつは、人の姿に擬態した何かは俺を食うつもりだ
「やめてくれええ!!助けて!左馬之助の兄貴!!!」
バクっ!!
一瞬で小五郎の頭の半分が食いちぎられた
子守唄が聞こえる
懐かしい歌だ、昔、母が歌ってくれた・・・
恋衣は母を知らない
母は恋衣を産んですぐに死んだのだと父は生前に言っていた
だから顔は知らない
自分に母が残したものはこの子守唄といつも首から下げている鬼子母神のお守りしかない
この歌が聞こえるということは、自分は母の元にいるのか?
目を覚ますと恋衣は洞窟の中にいた
「ここは・・・?幽慶様は」
解体工場に運ばれる途中で、奴らにレイプされそうになった自分を助けてくれた僧侶の姿を探すが見当たらない
それより美しい子守唄、母が歌ってくれた子守唄が洞窟の奥から聞こえるのだ
洞窟の奥に向かって歩いてゆく
肉が腐ったような、何だか異臭がする
「あ」
洞窟の奥にたどり着いた恋衣は思わず声を漏らした
洞窟の奥には無数の人骨に囲まれた、巨大な観音菩薩像があった
その観音菩薩像の前にはダークスーツに身を包んだ髪の長い女が立っている
女はこちらを振り返ると、目にも止まらぬ速さで恋衣の体を押し倒した
「きゃあああああ!!」
恋衣は叫ぶ
黒い女は口を開けようとした時だった
恋衣の胸にある鬼子母神のお守りに目に入った
彼女は、そのお守りを見つめながら、動きを止める
それが数分続いた
「いかんぞ、
声がして黒い女『
40歳半ばくらいの髭面の僧侶がそこに立っていた
「その娘を喰えば、また、お前の心は人から遠ざかる。お前は人として仏に迎えられたいのだろう?」
「幽慶さま。あの人は?」
「『
「なぜ、私をここへ」
「・・・おそらく、これが
僧侶が言うには最終戦争で軍は一人の女兵士をあるものと融合させるという実験が行われた
あるものとは南極で眠っていた、この星の外から来訪した液状の寄生虫である
黒い色をした液状の寄生虫の名前は『エヴァ・ノワール』と呼ばれる
その寄生虫『エヴァ・ノワール』を融合した女は人間離れした運動能力や、透明化を初めとする特殊能力を身につけたが、脳を寄生虫に乗っ取られたために、自分が何者であるかを忘れた
そして、寄生虫が生きるためには人間の脳を定期的に摂取しなければならないのだ
結論を言うと、実験は失敗
研究所は自我を失った女の暴走により破壊される
女は自分が何者かわからず、最終戦争後は安達原に住まいながら、人の脳を喰らって今日まで生き延びてきたと言う
「何故、幽慶様はそのことを?」
恋衣が尋ねる
「私が、彼女を鬼に変えた張本人だからだよ・・・」
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