第2話: 映らないスノーグローブ
フューチャースノーパークの夜は、無数のホログラムの雪が舞い降り、幻想的な光に包まれていた。
スノーグローブ・シアターの前には、夢を映すために訪れた来場者が並んでいた。
「夢を形にできるなんて、本当にすごい技術だよね!」
葵は目を輝かせながら言った。対照的に、夏樹は腕を組んで、その光景をただ静かに見つめていた。
「……そうか?」
「もう! せっかくだから試してみようよ!」
そう言って、葵は夏樹の手を引き、半ば強引にシアターの中へと連れて行った。
▶ 夢の可視化実験
館内はドーム型のシアターになっており、中央にはスノーグローブを設置する装置が並んでいた。
来場者たちは次々にスノーグローブを装着し、それぞれの夢が巨大なスクリーンに映し出される。
ある者は壮大な宇宙旅行を。
ある者は海の底で魚たちと踊る夢を。
ある者は子供の頃に憧れたヒーローとして戦う姿を。
どの夢も、生き生きとしていて、観客たちの歓声が響く。
「みんなすごく楽しそう……。」
葵は感動しながら、スクリーンを見上げた。
「ほら、次は夏樹くんの番だよ!」
「……俺はいいよ。」
「そう言わずに!」
促されるまま、夏樹はしぶしぶスノーグローブを手に取った。
▶ 何も映らないスノーグローブ
夏樹は、ゆっくりと装置に手を置いた。
「これで、俺の夢が映る……?」
装置が反応し、周囲の光がわずかに揺れる。
だが——
スクリーンには何も映らなかった。
静寂が広がる。
観客たちがざわめき始める。
「え……?」
葵も驚いた表情を浮かべた。
「夢を持っていないと、スノーグローブには何も映らないんだ。」
係員が淡々と説明する。
夏樹はただ、静かにスノーグローブを見つめていた。
「……そっか。」
何も映らない。
つまり、自分には夢がないということだ。
▶ 夢を持つ意味
シアターを出た後、夏樹は無言のまま歩いていた。
「……ごめんね、無理に誘っちゃって。」
葵が申し訳なさそうに言う。
「いや……別に。」
「でも、夏樹くんが本当に夢を持っていないなんて、信じられないよ。」
「現実を見ろよ。夢なんて持ってても意味がないんだよ。」
夏樹の言葉に、葵は一瞬だけ目を見開いた。
「……そうかな?」
「叶う保証もないし、期待するだけ無駄だろ。」
「それでもね、私は夢を持つこと自体に意味があると思う。」
葵は強く言った。
「夢があるから、頑張れるし、前を向ける。たとえ叶わなくても、そこに向かって進むことに意味があるんだよ!」
「……。」
夏樹は何も言わなかった。
ただ、スノーグローブを見つめ続けていた。
——本当に、俺には夢がないのか?
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