夢の国 「Future Snowpark」
Algo Lighter アルゴライター
【第1章】夢を捨てた男 vs 夢を信じる女
第1話: フューチャースノーパークの光と影
2050年、冬限定でオープンする「フューチャースノーパーク(Future Snowpark)」。
雪と光の幻想的な演出、最新技術を駆使したアトラクション。そこはまさに「夢が形になる場所」として、多くの人々を魅了していた。
だが、そこで働く若手スタッフ・夏樹にとって、その輝きはどこか空虚なものだった。
「こんなに夢だらけの世界に、俺の居場所なんてあるのか……?」
夏樹は、光り輝くテーマパークの喧騒の中、ひとりため息をついた。
▶ 夢を持たない男、夏樹
フューチャースノーパークでは、来場者の夢をXR技術で可視化する「スノーグローブ・シアター」が最大の目玉だった。
来場者はスノーグローブと呼ばれる小型デバイスを手に取り、それを通じて自分の「夢の世界」を映し出すことができる。
「夢を見せる技術か……俺には、関係ないな。」
夏樹は、施設管理スタッフとして働きながら、心の中でそう呟いた。
——夢を持たないことに、慣れてしまったのかもしれない。
彼の仕事は、パークのシステムの監視や軽微な調整。AIとロボットが完璧にオペレーションを行うこの場所で、人間の関与は最小限だった。
▶ 夢を信じる女、葵
「またそんな顔してる!」
軽やかな声が響く。振り向くと、そこには同僚の葵がいた。
葵は夏樹と同じく運営スタッフだが、彼女の態度はまるで違った。
「こんな素敵な場所で働けるのに、なんでそんなに浮かない顔してるの?」
「……別に。ただの仕事だろ。」
夏樹のぶっきらぼうな返答に、葵は呆れたように首を振る。
「夢を持たないで、ここで働くなんてもったいないよ。フューチャースノーパークは、誰かの夢が詰まった場所なんだから。」
「……夢ねぇ。」
夏樹は、曖昧に笑って誤魔化した。
——夢はただの幻想だ。持たなければ、失望することもない。
そう思っていた。
▶ 夢の国の違和感
その日、夏樹は休憩中に「スノーグローブ・シアター」を見学することにした。
ガラス越しに、来場者が次々とスノーグローブを手に取り、自分の夢を映し出す光景が広がる。
「……そんなに特別なことか?」
映し出される夢は様々だった。
宇宙を旅する夢、壮大なファンタジー世界、家族との幸せな時間——
どれも、美しく、輝いていた。
——俺には、こんなふうに見せる夢なんてない。
ふと、ガラスに映る自分の姿が目に入る。
その顔は、どこか空っぽで、ぼやけていた。
「夏樹くんも試してみれば?」
突然、横から葵が声をかける。
「は? いや、俺はいいよ。」
「やってみなきゃ分からないでしょ!」
葵は笑顔でスノーグローブを手渡そうとするが、夏樹はそれを拒んだ。
「……俺には、映すものなんてない。」
その言葉に、葵は少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。
「夏樹くんは、夢を見つけてないだけじゃない?」
「……かもな。」
葵の言葉を受け流しながらも、夏樹の心の中には、微かなざわめきが生まれていた。
——本当に、俺には夢なんてないのか?
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