第四話 時計の寿命
北欧に旅行中、時間つぶしのために、古風な木造りの時計屋に入ることにした。中には無数の骨董品が所狭しと並べられていた。そのどれもが、かつては主に仕え、その人生を見守って来たのであろう。今はどの時計にも主はいない。先に天界へと旅立っていったわけだ。この私にもその時は確実に近づいてきている。
「この店にはどんな時計でもございます。例え、永遠に動く物でも……」
主人は珍しい客に対して、自慢気にそう挨拶をする。
「自分が死んだ後、時計だけ動き続けているのは気分が悪い。私より少しだけ長生きしてくれれば、それでいい」
私の要望を聞いて主人はゆっくりとした口調でこう述べる。
「分かりました。では、あと六年と三か月だけ動く物を用意いたしましょう」
そのとき、信じがたい静寂の中で、部屋中の時計の針の音が響き、まるで、自分の心音のように聴こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます