第11話
晩餐会の会場ではたくさんの貴族たちが談笑している。
そこには当然シャルル・カッセル伯爵もいた。
彼はマリアーヌを見て驚いたような顔をしていたが、すぐにニヤニヤと笑みを浮かべながら近づいてきた。
「マリアーヌ! お前随分と見違えたな。それに、本当に公爵と結婚したんだってな。俺に感謝しろよ」
「カッセル伯爵……」
マリアーヌが顔をしかめると、ラインハルトが前に出た。
「これはこれは伯爵、お元気そうでなによりだ。その元気がいつまでも続くことを祈ってますよ」
威圧的に言い放つと、マリアーヌを連れてその場を離れた。
「ラインハルト様? あの態度は……」
「しばらくあいつには近づかないように」
離縁したばかりの相手と話していると、周りから変に注目を浴びる。
ラインハルトなりの気遣いなのだろうとマリアーヌは納得した。
「お気遣いありがとうございます」
その後、ラインハルトに連れられて何人かの貴族と挨拶を交わした。
皆はなぜか興味深そうにマリアーヌを見た後、ラインハルトを見てギョッとするような表情をするのだった。
「なんだか皆様が、ラインハルト様を見て不思議なお顔をしていますよ?」
「気にするな。結婚したのが珍しいのだろう。秘密裏に動く仕事ばかりしているせいか、冷酷公爵とか言われているからな」
「全然冷酷ではないのに……皆知らないんですね」
ラインハルトは少し目を丸くした。
そして彼が何かを言いかけた時、後ろから「ベイガー、久しいな」と明るい声が聞こえてきた。
「陛下、書面では頻繁に挨拶を交わしているではありませんか」
「直接会わねば寂しいではないか! ほほぉ……これが噂のベイガー夫人だな。会場でも一際目をひく美しさだ」
国王がニコニコとマリアーヌを見つめる。
マリアーヌは完璧な礼をした。
「お初にお目にかかります。マリアーヌと申します」
「うむ。しっかりしたご夫人がいるから公爵家は安泰だな。これからも公爵を支えてやってくれ」
「恐れ入ります」
「ははは、カッセル伯爵は実に惜しい人材を手放したものだ」
カッセル伯爵。
その言葉にラインハルトの雰囲気が変わった。
「陛下、例の件の証拠が集まりました」
「丁度良い。皆にも報告しようじゃないか」
国王も人当たりの良い雰囲気だったのが鋭く変化した。
「皆、聞け」
国王のよく響く声が会場中に響き渡る。
「今日この場には、貴族として相応しくない者がいる」
不穏な言葉に会場がざわめき立つ。
「その者は国に納めるべき税を着服し、私腹を肥やしている。そうだろう? シャルル・カッセル」
名指しをされたシャルルは青い顔で呆然と立ち尽くしていた。
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