第22話
私はかつてサー・ガレンと呼ばれた者だ。何度も生まれ変わり、エリンを探し続け、疲れ果てた魂を最後の希望に賭けてこの山の頂に辿り着いた。
大魔法使いエリンが私のエリンではないと告げられた時、私の心は砕け、絶望に沈んだ。彼女でないエリンに会うためにここまで来たのに、彼女は私の旅を理解しながらも、私のエリンではないと言い放った。
私は膝をつき、地面に額を押し付け、どうすればいいのかわからずただ彼女の名を呟いていた。そんな私に、大魔法使いエリンが再び口を開いた。
「始まりに戻りなさい。そこへ送ってあげよう。お前たちは始まりの地でしか幸せになれないはずだ。」
その言葉が私の耳に届いた瞬間、私は顔を上げる。彼女の瞳は静かに私を見つめ、深い知恵とどこか遠い悲しみを湛えている。「始まり…?」 私の声はかすれ、混乱が頭を支配する。
始まりとは何だ? どの始まりだ? 私がエリンと初めて出会ったあの村のことか? それとも、私が輪廻を始めた最初の人生のことか? 彼女の言葉は曖昧で、しかし確信に満ちている。私は立ち上がろうとするが、体は重く、心はまだ彼女の言葉を飲み込めずにいる。
「お前が言う始まりとは…どこだ? なぜそこに戻ればいい?」
私の問いかけに、彼女は穏やかに答える。
「お前が本当に求めているエリン――お前が魂で結ばれたエリン――と幸せになれる場所は、お前たちの物語が始まった地点だ。お前は何度も生まれ変わり、彼女を探し続けた。だが、輪廻の中でお前たちはすれ違い、遠ざかっていった。お前が彼女を失ったのは、始まりから離れてしまったからだ。私はお前をそこへ送ることができる。」
私は息を呑む。始まりに戻る。エリンと私が初めて出会った、あの村。あの瞬間。あの小さな魔法使いの少女が私の傷を癒し、私に笑いかけてくれた時。あそこから全てが始まった。あの場所で、私たちは確かに幸せだった。彼女と私が共に笑い、彼女の手を握り、運命に抗うことなく寄り添えた瞬間。それが私の魂がずっと求めていたものなのか? だが、彼女が私のエリンではないなら、どうやって私をそこへ送るというのだ?
「もしお前が私のエリンでないなら…なぜそんなことがわかる? なぜ私を助ける?」
私の声は震え、疑念と希望が交錯する。彼女は静かに微笑み、言う。
「私は大魔法使いエリン。時と運命を見守る者だ。お前が探すエリンとは別の存在だが、お前たちの絆は私にも見える。お前がここまで辿り着いたのは、偶然ではない。私がここにいるのも、偶然ではない。お前を始まりへ送るのは、私に与えられた役目なのかもしれない。」
私は彼女を見つめる。彼女の言葉が真実なら、私はエリンと再び会えるのか? あの始まりの場所で、彼女と幸せになれるのか? 長い輪廻の中で、私は彼女を見失い、彼女に会えない人生に絶望した。だが、もし始まりに戻れるなら、彼女とやり直せるなら――。私の心に再び火が灯る。疲れ果てた体が震えながらも、私は立ち上がる。
「なら…送ってくれ。始まりへ。私がエリンと幸せになれる場所へ。」
私の声はかすかだが、決意に満ちている。
彼女は頷き、手を差し出す。
「目を閉じなさい。お前をそこへ送る。お前たちの物語が再び始まる場所へ。」
私は目を閉じる。彼女の手が私の額に触れ、温かい光が私を包む。
エリン、私のエリン。始まりに戻れば、お前がそこにいるのか? お前とまた笑い合えるのか?
光が私を飲み込む中、私は祈る。始まりの場所で、エリンと幸せになれますように。
長い旅の果てに、ようやくお前と一つになれますように。私の魂は彼女へと向かい、彼女の待つ場所へと旅立つ。
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