第8話 挑発
☆
私は先輩と一緒にお弁当を食べた。
それから私達は自販機で飲み物を買ってから戻ろうと思い校舎内に入る。
そして私は先輩と名残惜しい感じで別れてからそのまま教室に帰る。
移動授業だった。
そのまま私は授業を受けた。
☆
放課後になってから私はみんなと別れてから先輩の居る教室に向かう。
それから私は先輩を探した。
すると先輩は進路指導室に居る事が分かった。
私は直ぐに向かって外で待つ。
そうしていると10分ぐらい後に先輩が出て来た。
「弓親」
「...先輩。一緒に帰りましょう」
「ああ。そうだな。じゃあ先生」
「気を付けて帰れよ」
進路指導の先生に頭を下げてから私達は表に出る。
それから下駄箱、昇降口と抜けてから歩いていると先輩が「弓親は将来の夢とかあるのか?」と聞いてきた。
私は顔を上げて先輩を見る。
「...そうですね。...私は将来の夢は...何だか安定した職業に就きたいです」
「そうか。...資格とか?」
「大学に無駄に行くのもあれなので早く決めたいんですけど」
「...確かにな。そういうのは早めに決めた方が良いな」
「そうなんです。だから頑張ってますけど...将来の夢が決まらないです」
「だな。...俺も明確には決まってない部分があるから」
「ですね」
それから私は下駄箱に靴を直してからそのまま表に出る。
そして校門まで向かって歩く。
私はその際に顔を上げた。
「でも先輩。私、先輩の奥さんになるのが夢です」
「そ、そういうのは良いから」
「良くないですよ。真面目な話です」
そして私は笑みを浮かべながら歩く。
アスファルトの硬さを踏みしめながら歩いていると「...八乙女...」と先輩の声がしてから私は顔を上げる。
そこに確かに八乙女が居た。
「...何の用事だ」
「私の...身を心配して」
「...何が言いたい」
「同じ穴の狢だねって」
「...」
私は訳も分からず八乙女を見る。
すると八乙女は顔を上げて声を震わせる。
「...私、彼氏に振られたの。...浮気していたんだなって」と先輩に言う。
先輩は「...それで?」と顔を上げる。
「...私達、戻れないかな」
「戻れないな。...それで?」
「...そ、それでって」
「...お前アホ?戻らないからな」
「...」
そうしているとそんな八乙女の立っていた陰から誰か出て来た。
それはムキムキの野郎である。
所謂、筋肉質の男。
何だコイツは、と思いながら先輩を見る。
「...お前さ。自らの義兄を連れて来て何がしたいの?」
「お前が付き合わないんなら俺が貰うって話もしたかったんだよ」
「...そうなんだな。勝手にしたらどうだ」
「おいおい。つれねぇな。前は遊んだ仲だったろ」
「...お前、確か暴行罪で刑務所に入っていただろ。何で戻って来た」
「まあ色々あってな。...そしたら何の。...美晴が泣いていてな」
「...そうかよ」
そして先輩は「...行くか」と私に言ってきた。
私は頷きながら歩き出す。
すると「なあ待てよ」と先輩に絡む。
先輩は「地に落ちた者同士仲良くしたら良いんじゃないか」と切り伏せる。
「...お前らとは二度と関わらないって決めているんで」
「またそんなつれねぇ事言うなよ」
「...いや。もう帰るから。離してくれるか」
それから先輩が手を振り払う。
するとそんな先輩に対して男は「美晴の事が可哀想って思わないのかよ」と言いながら私を見てくる。
「こんな女のどこが良いんだ?」とも言いながら、だ。
先輩は「それ以上言うと口を潰すぞ」と睨む。
「おー。怖いねぇ」
「お前のやり方は知っている。...そうやって人の気持ちを高ぶらせて自らは何もせず地に堕とすよな。外道なやり方で...何でそれで兄妹が成り立つのか分からない」
「...よくまあご存じだな」
「お前、刑務所で何も学ばなかったのかよ」
「刑務所は退屈でねぇ」
「最低だな。この屑」
そして先輩は私の手を握ってから歩き出す。
それから「まあまた今度な」と手を振ってくる男。
私はそれを見てから私の手を掴んでいる先輩を見る。
先輩は「...クソ」と呟いた。
☆
「あんな奴が居たんですね」
「...奴は所謂、内乱の中での暴行罪で刑務所に送られた生粋の屑だ」
「...自らの手を下さないって言ってましたけど」
「辞めた奴の分の暴行を相手に対して一回だけ暴行を行った。それで捕まったんだ」
「...まさか」
「だからまぁ罪が軽くなったんだろうな」
緑色公園。
木々が揺れている中の公園で腰掛ける私達。
それから私は先輩を見ていた。
お汁粉を飲む。
「...八乙女が呼んだんだろうな。...アレを」
「つまり今の状況をひっくり返す為?」
「だろうな。多分...その為に身体も差し出しているんじゃ?」
「クズ過ぎですね」
「...あくまでそれは予想だが」
そして先輩は缶コーヒーを片手に空を仰ぐ。
私はその姿を見ながら「...」となる。
そうして私達は過ごす。
すると先輩は「...あくまでお前と付き合って良かったかもしれない」と呟く。
「...え?」
「お前と付き合って無かったらまた何かごちゃごちゃ言われたかもな」
「...ですかね?」
「ああ。きっとな。弱みに付け込んで全てを壊すやり方だから」
「...」
私はお汁粉の入った缶を震わせる。
それから私は顔を上げた。
「あんなのに負けたくないです」と力を込めて言う。
先輩は「だろうな」と言う。
「...と言うか俺も負けたくない」
「ですね。...嫌ですよあんな変な人」
「...そうだな。...一先ずは離れて過ごそう。奴らから」
そして私達は缶をリサイクルボックスに捨てる。
それから立ち上がってから私は先輩を見た。
先輩は前を見据えている。
数秒してから私を見てきた。
「行くか」と言いながら、だ。
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