ともかく読まなきゃ始まらない

 まず大前提として、レビューというものは作品を読まなきゃ書けません。

 そりゃそうです、読んでもないのにレビューが書けるなんてやつがいたら、それは誰にでも通用するテンプレ的なおべっかを振りまく信用ならない輩です。

 もしくは、AIに作品のレビューを書かせているか。

 この両者は、多分作品を推すこと以外の主要な目的があると思われるので、彼らにリアクションを起こすことには慎重になった方がいいかもしれません。

 手抜きで己の情熱パッションが伝わるなどと思わないことです。


 で、読むにしてもどのくらい読み込めばいいか、という質問が飛んでくると思います。


 甘い。


 その考えは死んだらチートパワーを得たうえで異世界に転生して無双できると思ってる妄想ばかりが立派な怠け者や、カクヨムでチープな妄想の垂れ流しみたいな作品を書いてワンチャンを狙って作家デビューして楽して儲けようと思ってるワナビおじさん・おばさん並みに甘い。


 いつ誰が「その作品だけ」と言いましたか?


 そう、レビューを書くための文章力というのは、一朝一夕にして身に付くものではありません。

 あなたがこれまでの人生で読んできた活字の数+その作品が、レビューを書く時の文章力に反映されるのです。

 つまり、ここに書いてある内容を全部理解しても、レビューを書く「助け」にはなるかもしれませんが、それで誰もが感動するようなスーパーレビューは書けません。


 ここで「活字」という表現を用いたのは、読む対象が小説やエッセイなどの「作品」に限らない、という意味です。

 図鑑や評論、学術書、白書、ニュース記事、雑誌、TRPGのルールブック、データ資料集、料理のレシピ、電子掲示板便所の落書き、ツイッタランド……とにかくありとあらゆる文字媒体です。

 そして、どこか一点に偏っていてもよくない。

 とにかく幅広く、自分の趣味を広げるつもりで読んでみてください。

 それに応じて、知識や語彙力、読解力など、レビューを書く上で必要な下地がどんどんと出来上がっていきます。


 とはいえ、いつまでも読んでばかりじゃレビューを書くことができません。

 達人になるまで待ってからレビューを書くなんて気の長い話をするつもりはありませんからね。

 どのくらい読めば、という明確な指針がわからないのであてずっぽうにはなりますが、一般的な日本の義務教育を受けた人であれば、ジャンルがバラバラの書籍を2~30冊くらい読めばそれなりに脳みそが仕上がると思います。

 いや、わかんないんで「100冊以上読め」、とか言いたいんですけど、小説一冊書けとかいう話でもないですからね。


 もうそのくらい(あるいはそれ以上)読んだよ、というのであれば、レビューを書きたい作品の方にフォーカスしてみましょう。


 個人的な事を言いますと、どのくらいでレビューを書くに値するほど作品の事を読み解けるかは、作品にもよることが多いです。

 展開が早く読みやすい作品であれば1万文字未満でもレビューが書けますし、スローテンポで山場がなかなか訪れない作品であればその山場が訪れるまでなかなかレビューを書くことができません。


 とはいえ、だらだら読み続けるのも自身の精神衛生によろしくないです。

 とりあえずの目安として、5万文字前後で判断してみましょう。

 それまでで「これは!」というものが見つかればそれをとっかかりにレビューを書けばよし。

 それまで読んでも自身の中に引っかかるものがなく、なおも「読みたい」という気持ちが起こらなければ、それはあなたの感性には合わない作品だと思います。

 寒冷な気候を好む作物を温暖な気候の耕作地で育てようとしても、良い作物はできないどころかまともに育つかどうかすら危ういです。

 無理して読み続けても苦痛なだけですので、潔くレビューを書くことをやめた方が互いのためです。

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