童話国家。観察日記
一人三歩
観察日記:「戦乱の幕開け」
オトギ歴321年6月18日 天候:曇り
今日も戦国の空は重く、どこか沈んでいるように見える。各国の覇権争いが激化し、もはや誰が誰と手を結んでいるのか、誰が誰を裏切るのか、全く分からない混沌とした状態だ。手を結ぶことなく、ただ利用し合う関係。それがこの時代のルールであり、各国はそれを理解したうえで動いている。
モモタリアでは、鬼ヶ島から奪った財宝をもとに兵士を鍛え、国力を充実させているという。彼らの軍は規律正しく、圧倒的な力で他国をねじ伏せることを得意とする。鬼退治の伝説はすでに過去の話だが、その英雄の血脈は今も戦場に息づいている。しかし、彼らが軍事力を強めるほど、周囲の国々は警戒し、別の策を講じるのが戦国の常だ。
一方で、カグヤニアの動きは静かでありながら不気味だ。彼らは決して正面からぶつかることなく、月の民の技術を駆使して策謀を巡らせている。各国の王たちは彼女に魅了され、その影響下にあるとも言われている。しかし、求婚者として近づいた者は、最終的に捨てられ、力を失う運命にある。この国と関わること自体が、一種の賭けなのかもしれない。
海上ではウラシマリアが勢力を拡大しつつある。彼らは時を操る術を持ち、戦場を自在にコントロールすることができる。特に、敵の老化を誘発する戦術は恐ろしいもので、戦う前から勝負がついていることもあるらしい。ただ、時間を操る力は万能ではなく、使いどころを間違えれば自国の寿命を縮めることにもなる。ウラシマリアの将軍たちは慎重な判断を迫られている。
山岳地帯ではキンタリスが猛威を振るっている。山の王として獣を従える彼らは、開けた平地ではなく、地の利を活かせる山や森で戦うことを好む。彼らは決して正面から戦うのではなく、ゲリラ戦を仕掛け、敵を疲弊させる戦法を取っている。そのせいか、キンタリスの領地は非常に防衛が固く、他国が攻め落とすことは容易ではない。彼らが動かない限り、戦の流れは大きく変わらないだろう。
一寸法師のスンパリスは、影の中で暗躍している。彼らは決して大軍を率いるわけではないが、要人暗殺や攪乱戦術を得意とし、敵の中枢を直接狙うことで勝利をもぎ取る。兵士の一人一人は小柄だが、戦場ではまるで忍者のように動き、敵陣を混乱に陥れる。戦争とは数ではなく、知略であることを体現する国家だ。
ブンブリアは、変身能力を活かし、敵国の中に潜伏することで戦を有利に進める。彼らは正面からの戦闘は苦手だが、情報戦においては比類なき力を持つ。すでにいくつかの国では、ブンブリアのスパイが国政に入り込んでおり、敵国が気づかぬうちに操られているとも言われている。この国の真の恐ろしさは、その存在を意識したときにはすでに手遅れになっていることだ。
ツルギアは戦闘民族ではないが、織物を武器にしている。彼らの布には魔力が宿り、それを纏うことで兵士たちは異常な防御力を発揮する。特に、敵国の王族に布を献上し、戦場で裏切りを誘発させる戦略を得意としている。彼らの目的はただの戦争ではなく、戦争を操ることで影響力を持つことにあるようだ。
サルカニアは弱小国でありながら、何度も復讐を繰り返している。強国によって踏みにじられるたびに彼らは立ち上がり、いつの日か必ず報復するという信念を貫いている。そのしつこさと復讐心が、彼らの最大の武器なのかもしれない。
コブリアは戦そのものではなく、戦意を操作することに長けている。彼らの舞踊は味方の士気を高め、敵の心を乱す効果がある。そのため、戦場では予想外の逆転劇が起こることも多い。ただし、彼らの力は直接的な戦闘力ではなく、精神面の支配に依存しているため、環境次第では全く無力になることもある。
そして、ヤマバニア。彼らは闇に生きる者たちであり、霧と変身術を駆使して敵を混乱に陥れる。戦場では視界が奪われると同時に、味方の中に敵が紛れ込むため、疑心暗鬼が生じる。この国との戦いでは、誰を信じるべきかが最も重要な課題となる。多くの国がこの国を恐れており、できる限り直接の戦闘を避けようとしている。
こうして、戦国時代はすでに火がついている。それぞれの国は、他国を利用しながらも決して手を結ぶことはない。一時的な協力はあれど、必ず裏切ることを前提としている。勝ち残った国は敗者の能力を半分だけ取り込めるため、勝利を重ねるほど強大になっていく。
果たして、どの国がこの戦国の世を生き残るのか。今のところは誰にも分からない。ただ一つ確かなことは、この戦争が終わるまで、誰も安心できないということだ。
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