第47話 告白

 詩織の家に着くと、私は少し躊躇いながらも、中へ足を踏み入れた。


 「適当に座ってて」


 促されるままにソファーに腰を下ろし、ぼんやりと顔を俯かせる。

 私は何を考えればいいのかも分からなかった。


 詩織が飲み物を用意し、私の隣に座る。

 ふと、彼女の手元を見ると、私の分まで準備されていた。


 「……ありがとう」


 小さく呟くと、詩織は「どういたしまして」と微笑んだ。


 「少しは落ち着いた?」


 私はわずかに息を吐いて、曖昧に頷いた。


  「……うん、まあ」


 本当のところ、気持ちはまったく整理できていない。穂香の泣きそうな顔、震える声、最後に振り返ったときの姿——全部が頭の中でぐるぐると回り続けている。


 「穂香……今、どうしてるかな」


 ふと漏れた言葉に、詩織が少しだけ目を細めた。


 「まだ泣いてるかもね」


 その言葉が、胸に重くのしかかる。


 「……私、間違ってたのかな」


 そう呟くと、詩織は静かに首を振った。


 「間違いなんかじゃないよ」

 「でも……」

 「結菜ちゃんは、どうしたいの?」


 どうしたいのか——その答えを見つけられずにいる。


 「……分からない」


 自分の声が、ひどく弱々しく感じられる。


 「なら、考えるのをやめてみたら?」


 詩織が私の手に触れる。その温もりに、一瞬だけ息が詰まる。


 「……そんなの、無理だよ」


 私がそう呟くと、詩織は少し考えるように視線を落とし、それから静かに口を開いた。


 「じゃあ、私に意識を向けてみて」


 私は、思わず詩織を見た。


 「……え?」

 「私のこと、どう思う?」


 突然の問いかけに、思考が止まる。


 「どうって……?」

 「ただのクラスメイト? それとも……もう少し近い存在?」


 詩織の瞳が、まっすぐに私を捉えていた。

 その視線を受け止めるのが、少しだけ苦しい。


 「……分からない」


 今の私は、誰のことも正しく見られていない気がする。穂香のことも、詩織のことも。

 詩織は、ゆっくりと私の手に触れた。


 「穂香さんだけじゃなく、私のことも……ちゃんと見て」


 私は、思わず詩織を見た。


 「私はね、結菜ちゃんが好き」

 「……え?」

 

何を言われたのか、一瞬理解できなかった。


 「……冗談、でしょ?」

 「冗談なわけないよ」


 詩織は、私の手を包み込むように握る。


 「今すぐ答えを出せとは言わない。でも、少しは考えてみてくれない?」


 彼女の瞳は、真っ直ぐに私を捉えていた。


 「……そんな簡単に気持ちは変えられないよ」


 かすれた声でそう言うと、詩織は静かに微笑んだ。


 「気持ちはね、変わるものだよ」


 その言葉が、心の奥に引っかかる。


 ——本当に、どうしたらいいの?

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