アリシアとの出会い

 森の中を駆け抜け、悲鳴のした方向へと向かう。


 木々を抜けると、そこには数人の盗賊風の男たちが剣を構え、一人の少女を囲んでいた。


 金色の髪が陽光を反射し、蒼い瞳が鋭く輝く。その少女は白と青を基調とした軽装の鎧を纏い、手にした剣で必死に応戦していた。


「へへっ、おとなしくしろよ、お嬢さん。どうせこのままじゃ負けるんだからなぁ!」


 男の一人が薄汚れた笑みを浮かべる。


「ふざけるな! 私がこんな奴らに遅れを取るとでも思っているのか!」


 少女——後に知ることとなるが、彼女の名はアリシア・フォン・エルゼン。


 彼女は気丈に叫ぶが、息が上がっている。どうやらすでに体力を削られているらしい。


「……これは、助けるしかないか」


 俺は軽く肩を回し、盗賊たちの前に堂々と歩み出た。


「おい、お前ら。そこのお嬢さん、俺が引き取るから帰れ」


 盗賊たちは一瞬唖然とし、次に嘲笑した。


「はぁ? なんだお前。どこかの村人か?」


「それとも、正義の味方気取りか?」


「おいおい、まさか一人で俺たち全員を相手にするつもりじゃないだろうな?」


 俺は一歩前へ出ると、試しに軽く手を振った。


 ——瞬間、衝撃波が生まれ、盗賊たちは吹き飛んだ。


「うわあああっ!?」


 木々がなぎ倒され、地面に転がる盗賊たち。あまりにも圧倒的な光景に、アリシアは目を見開いた。


「な……何をしたの?」


「いや、ちょっと手を振っただけだけど?」


 俺の言葉に、彼女は呆然としたままこちらを見つめる。


「……本当に人間?」


 そう聞かれて、俺は肩をすくめるしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る