異世界への転送

 石碑の文字が光を放ち始め、俺の体が再び浮かび上がる。


「では、あなたの新しい人生が始まります。幸運を祈ります」


 神の声が響いた瞬間、俺の体は一気に下へと引き込まれた。落下するような感覚、だが不思議と恐怖はない。


 視界が回転し、光の中を通り抜ける。次の瞬間——


 俺は草の上に横たわっていた。


「……ん? ここは?」


 仰向けになったまま空を見上げる。見渡す限りの青空、そして遠くに見える森と山々。爽やかな風が頬を撫でる。


 異世界だ。俺は本当に転生したんだ。


 ゆっくりと起き上がり、自分の体を確認する。特に違和感はないが、衣服が異世界風に変わっていた。シンプルなチュニックにブーツ、そして腰には簡素なベルト。


「とりあえず、周囲を確認するか……」


 立ち上がり、近くにあった小川で顔を覗き込む。映ったのは、元の俺とは違う、少し若々しい姿。


「……イケメンになってる?」


 どうやら転生の影響で、見た目も向上しているらしい。


 その時——


「キャアアアアッ!」


 遠くから悲鳴が聞こえた。


「……異世界生活、のんびりとはいかないみたいだな」


 俺はため息をつきながら、声のする方向へと駆け出した。

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