第3話:行き掛かり上助けた男。

「トッキーもしセックスたくなったら私に構わず風俗でもどこでも行っていい

からね・・・責めたりしないから・・・」


ネルはそう言った。

たしかに・・・ネルとはどんなに願ってもセックスはできない。

あとは言うことなしだけど、それだけがネックか・・・でもそれが分かってて

ネルを買ったんだから・・・。

そんなことを思いながら俺はバイク屋からバイクに乗ってレジデンスに帰っていた。


そしたら、いきなり俺のバイクの前に飛び出してきたやつがいた。

俺はもう少しで、そいつとぶつかるところだった。

急ブレーキを掛けて止めたバイクの前に、ひとりの男が倒れていた。


俺はバイクを止めて、男の様子を見に行った。


「大丈夫ですか?・・・どこか怪我は?」


「あ、申し訳ない、だ、大丈夫と思いますが・・・」


男は60歳代くらいでヒゲを生やした学者ふうな男だった。


「それより男たちに追われてるんです、私はそいつらと戦う力はありません」

「捕まったら殺されないまでもリンチに会うと思います」


「ああ、トラブル抱えてんだ」


そう言ったかと思ったら路地からふたりの男が息をきらして飛び出してきた。

俺はすぐに、そいつらが男を追いかけて来たやつらだと察した。


「おい、若いの・・・そのおっさん、こっちに渡してくれ」


「悪い・・・行き掛かり上でね・・それにどう見てもあんたらのほうが悪人面に

見えるけど・・・」


「そのおっさんに関わるとお前も痛い目を見るぞ」


「もう関わってるよ・・・俺って困ってる人を見ると見捨てられないタチだから」

「この人に手を出すって言うんなら俺が相手するぜ」


「え〜い、面倒だ・・・こいつもろとも、やっちまうぞ」


結局、俺もトラブルに顔をつっこむ羽目になった。

俺は腕には自信があったから、なんとか男ふたりを倒して学者もどきの男を救った。

多少手傷は負ったけどな。

男二人は気絶して道路に寝そべっていた。


俺は学者もどきを、バイクに乗せてネルの待つレジデンスに連れ帰った。


「おかえり、トッキー・・・」


「ただいま、ネル」


「ん?その人は?」


「うん、ちょっとトラブルに巻き込まれちゃって・・・この人困ってたから助けて

ここへ連れて帰って来た」


「ヤだ、トッキー怪我してるじゃない?」


「たいしたことないよ、こんなのカットバン貼っときゃすぐ治るって」

「それよりこの人・・・」


「あ、申し訳ありません・・・奥さん、ご迷惑おかけします」


「え?奥さん?・・・ヤだ、奥さんだって・・・」


「あ〜この子は僕の奥さんじゃなくてホログラムで、ネルって言います、僕の

彼女です」


おじさんは驚いたように・・・


「そ、それはまた失礼しました」


「いいんです、私のことは気にしないで・・・それより、おじさん・・・

お名前は?」


「おっ、私は「神谷 耕三かみや こうぞう」と申します」


つづく。

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