第16話 ◇とうさん
56.
私は特に真樹夫のことが気掛かりだった。
真樹夫はもちろん三浦くんが実の父親でないことを知っている。
私よりも真樹夫のほうが先に三浦くんと仲良しになった。
あとで聞いた話だけれど、私にプロポーズしてくれる少し前に
実は三浦くん、真樹夫にラヴコールされていたのだとか。
家族として一緒に生活するようになってからも真樹夫と
三浦くんは上手くいってると思う。
自然にお父さんと呼べる日がきたら……
なんて悠長なことを考えていたのだけれど。
職場へは秘密にしておきたいっていう私の思惑もあって
彩乃が真樹夫の影響で三浦くんのことをにぃにぃと呼ぶことは
職場バレを考えると都合が良かったこともあり、ついつい
ここまで来てしまった。
でもどこかで区切りをつけないと、そう思うようになった。
私には見せないけど、三浦くん影で泣いてるんじゃないだろうか。
折角真樹夫と彩乃のお父さんになってくれて、私の夫に
なってくれた大切な人なのだ。
私も彼を大事にしてあげたい。
そこで私は一計を案じることにした。
ゲーム感覚で家族で呼び名ゲームをすることにした。
今日は私のことを家ではお父さんと呼ぶこと、言い間違え
が一回もなければ、好きなおやつを買ってあげる。
その次は三浦くんのことをお父さんと呼ぶこと……ンで
その次の日は真樹夫をお父さんと呼ぶことっていう感じ。
とにかく4人順繰りなんだけど、呼び名はお父さんのみ
っていうゲーム。
順番は私が操作して三浦くんにたくさん番が回るように
した。
ゲームだからねぇ~、真樹夫も気負わず言えるよう
だった。
********
1ヶ月した頃、私は真樹夫と彩乃にちゃんと言った。
この先、ずーっと三浦くんのことをお父さんと呼ぼうねって。
真樹夫が私に聞いてきた。
他所でも、例えば病院の関係者がいる時もそう呼んでいいのかって。
ごめんねぇ~ 真樹夫、やっぱりいろいろと気を遣ってたんだよねぇ~。
私の我儘で職場に内緒にしてたもんだから。
「もちろん、いいよ。
積極的にまだいつ発表するかは決めてないんだけど
自然に知れたらそれはそれでもういいかなって思ってるから」
「にぃにぃ、俺にぃにぃのこと、とうさんって呼びたい」
「とうさんか、こそばゆいけど、うれしいぞっと」
「あたしはねぇ……にぃにぃ、おとうさんってゆう」
「あはは、おとうさんか、泣けるねぇ~」
「三浦くん、私の我儘で今までごめんね。
それと私も家では冬馬さんって言えるようにガムバルぅ」
「冬馬さんか、なんかぞくぞくする。
楽しみぃ~」
今のところ職場では表向き私は名前を八木亜矢子で
通している。
近い将来、三浦亜矢子に変えないとと思っている。
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