第15話 ◇下僕と姫 👑



 三浦くんにプロポーズされて結婚したのは、真樹夫6才

三浦くん28才私32才の年だった。



 職場で結婚したことを隠していたわりに、やるべきことは

早かった。



 三浦くんにもプロポーズを受けた時に宣言して

いたのだが、三浦くんとの子供を早々と授かった。



 私は妊娠の後半になるまで……


 真樹夫の時がそうだったのだけど、あまりお腹が目だたないタイプのようで

8カ月めになった頃はじめて周りの女子職員や同じ医師たちからもしかして

オメデタ? と聞かれるようになった。



 しかし、彼らは一様にその先は聞いて来ない。

 きっと未婚の母とか! と思われているのだろうなぁ。


 結婚の報告してないのだから、誰だってまぁそう解釈するよね。



 相手は誰なんだろう?



 そういった疑問がしばらくの間職場の空気にあったけれど

身近な三浦くんをリンクさせる人は面白いことに、誰ひとりとして

いなかったみたい。


 これってほら、あれ……灯台下暗しっていうヤツよね。



 そしてどうでもいいことなんだけど、時期同じくして

元夫の六田英氏はその頃、研修の一環として米国に単身

飛んでいった。(飛んで飛んでぇ~)飛んでいっちまえ~。




           

 1~2年で帰国するはずが、彼は研修期間を過ぎても帰っては

来なかった。


 あちらでずっと働いているらしい。



 そして彼が渡米して5年ぐらいした辺りでどうも影木景子女医とは

理由は分からないけれど渡米後破局し、それもあってあちらから

帰らないのだろうと、ちらほらあちこちから情報が入ってきた。



 そしてせんだって、正式に離婚したと噂に聞いた。


           



ヤツはバツ2になった。


 妹の彩乃は4才にそして真樹夫はもう11才になっていた。

 7才離れた妹を……

 29才離れた娘を……


  真樹夫と三浦くんぱそれはそれは溺愛した。

  レロレロ状態で彩乃は最強のお姫様になった。



 すると私は下女か? と思われるが、私も彩乃ほどではないがふたりから

溺愛されていて、ぷちお姫様で過ごしている。


 男子が下僕でいることをモノともせず受け入れてくれるので、

我が家はいつも平和で毎日が幸せの連続だ。



 私は、病院が女医に対して長いスパンで育て守るという

なんとも有難いスタンスを持っているので産休を取り、更に

夢のような育児休暇までとらせてもらい、そして真樹夫の時

同様、病院内にある託児所に預けるという形態で職場復帰を

果たした。



 父親として彩乃を構いに託児所を訪れる三浦くんに、

誰も不信を抱かない。



 真樹夫の時もそれはそれは自分の子かと思うほど足繁く見に行ってたからねぇ~、今更だった。



 そんなこんなで今だ三浦くんとの結婚は秘密裏にされたままだ。

 彩乃は家でも託児所でも三浦くんのことをにぃにぃと呼んでいる。



 私たちが結婚してからも真樹夫が彼のことを未だにぃにぃと呼んでいるから。


 元夫と影木景子女医は離婚したと聞くし、そもそも元夫が

今はこの職場にいない。


 そのような状況もあって、そろそろ周囲に発表しても

いいかなぁなどと思っている今日この頃。


 彩乃も4才になるし真樹夫は11才。


 いくらなんでもいつまでも三浦くんをふたりのお兄さん

にしておくことも限界を感じるもの。 



 何か職場には伏せてほしいとお願いしたせいで、三浦くんが

子供たちからお父さんと一度も呼んでもらえてないこと、

最近特に申しわけなく思うようになってきた。

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